まだ評価が追いついていない映像のカリスマ
1991年 監督/ きうちかずひろ
20年にも渡り連載が続いた人気漫画『BE-BOP-HIGHSCHOOL』の作者きうちかずひろの映画監督デビュー作品。映画監督としてVシネマを含む映画作品を7作、小説家として『藁の楯』を筆頭に11作品を発表している実に多才な作家です。
漫画出身というだけあって、その画作りは超一流です。浮いたシーンも散見されますが、それを押しのける超絶インパクトシーンが圧倒的に勝っており、その印象は『その男、凶暴につき』で映画監督デビューした北野武に通じるものがあります。
深作欣二監督作品『仁義なき戦い』から影響を受けたBE-BOP-HIGHSCHOOL同様に、本作も広島弁を喋る登場人物の群像劇として描かれています。デビュー作にして卓越した演出力。まさに痺れる映像の数々。大胆な省略法を見せたかと思えば、執拗に間を取り観る側を翻弄するその手腕に驚かされます。技巧に走りすぎず、唯々素晴らしいカットを創り出すセンスに脱帽。
主人公カルロスを演じるのは竹中直人。日系三世ブラジル人で、国際指名手配をされている裏社会の大物という役どころを、得意の顔芸と狂気を孕んだ演技で見事に体現。
カルロスをつけ狙うヒットマンに、当時バラエティ番組で人気者だったチャック・ウィルソンを配役。その強靭な肉体と冷徹さはターミネーターを彷彿させます。
コレ以降のきうちかずひろ監督作品と比べると荒削りな部分が目立つも、その後の作品にはない鮮烈なシーンの数々と、監督デビュー作とは到底思えない演出力。ギラギラの血まみれ成り上がり物語は、日本版『スカーフェイス』とも呼べる程の狂気に満ちています!
【この映画の好きなとこ】
◾︎矢能の訪問
ブラジル野郎と見くびりこき使う山城一家の組員を射殺するカルロス。一触即発の危険な空気がジトジト感たっぷりに描かれるオープニングシークエンス。
◾︎オーディション
ヒットマン人選に呼ばれた2人の男。射撃で決着をつけると思いきや…。山城一家組員のコミカルな反応と、ヒットマンクリスの非情なコントラストが出色。
◾︎成瀬の訪問
カルロスの店に突然現れた成瀬。ゆっくりと拳銃に手を伸ばすカルロスをサスペンスたっぷりに描きます!
◾︎刺客クリス
ヒットマンクリスの登場で消された室内照明。暗がりに早川組組長の顔だけが浮かび上がる舞台劇さながらの鮮やかな演出!
◾︎軽いヤクザ
成瀬正孝演じるインテリ系ヤクザ。吊し上げたカルロスに罵られるも、軽く返す「はーいお疲れー」が最高!
◾︎麻耶
片山の恋人麻耶を殴り病院送りにするカルロスの弟アントニオ。女性に暴力を奮うシーンは嫌いだけど、これは片山への当てつけと炙り出し戦術である為嫌悪感無く見られる。うまいなあ。
◾︎血染めの灰皿
組長から制裁を受け血を流している成瀬。組長の手に握られた灰皿が血まみれになっている事から、凶器が灰皿であった事を物語る無言の演出!素晴らしい!
◾︎vsクリス①
団地の長い通路を全力ダッシュで逃げるカルロス。狩りを楽しむかのように悠々と銃を構え狙いをつけるクリス。隠れ場のない狩りから、いかにしてカルロスは逃れたのか?
◾︎vsクリス② 伝説の43秒
カルロスに銃を突きつけられ、覚悟を決め目を閉じるクリス。このあと物凄いものを目撃する事になります!本作最大の見せ場!こんな演出見たことない!!
◾︎日本刀対ショットガン
この対決のオチはギャグなのか?いやいやこれはブラジル人を馬鹿にしてきた日本人へのしっぺ返しとボクは捉えています。
◾︎ラストシーン
逮捕されるカルロスを見てほくそ笑む成瀬。何かを呟くのだが、その声は我々にも聴き取れない。しかしその言葉を読み取ったカルロスから最後の咆哮を引き出す事になる。ここ最高に上手い!
主人公のカルロスは、喧嘩の種を撒きつつ敵対する組の抗争激化を静観し、横取りをしてしまうような男としてのプライドを持たない人物。それでも嫌悪感を抱かせないのは、カルロスの言葉「ブラジル帰りのバナナボートやなんの言われて馬鹿にされますけん、人の何倍も働かなければのし上がれんのですよ」から窺えるように、暗黒社会の底辺に蠢くひもじさが描かれているから。そして在日外国人の悲哀さえ浮き彫りにしているところに、きうちかずひろの凄みと愛があります。
本作はVシネマとして製作された作品でありながら、その確かな手腕を認められたきうちは次回作以降劇場用作品を手がける事になります。そして8年後、本作の続編『共犯者』という自身の最高傑作をモノにするまで、きうちかずひろは一作毎に確かな進化を成し遂げていくのです。













