深作欣二の遺言。
深作欣二が立ち上がれば、多くのプロフェッショナルが動くんだなと実感させられる圧巻の映像。こんなに凄い日本映画があるとは驚きです。この作品に出会えずに終える人生は寂しいもの。しかしまだ観ていない人には、生きる喜びが残っています!
1987年 監督/ 深作欣二
深作作品の特徴でもある、舞台劇のようなオーバーアクトと台詞回しが、必殺の様式美、映像美と見事に融合。登場するキャラクターや俳優も当然ながら"深作映画の住人"で彩られました。
深作の盟友千葉真一が主宰するジャパンアクションクラブが制作協力をしており、千葉真一、真田広之ほか多数のJACメンバーが出演しています。他に岸田今日子、蟹江敬三、成田三樹夫、室田日出男、石橋蓮司らが名を連ねる豪華版となり、必殺シリーズ15周年記念超大作に相応しい顔ぶれとなりました。
必殺シリーズのカラーである"陰"を"陽"に180度転換し、昼夜を問わずダイナミックなアクションが炸裂する意欲作。必殺ファンのみならず、すべての映画ファンの五感を揺さぶる日本アクション映画の最高峰。ここに型にハマらない、いや、型を壊し続けて来た深作欣二の気概があります。
テレビシリーズ第一弾『必殺仕掛人』の第一話と第二話の監督を務めた深作は、自身で生み出した伝統のスタイルを、こともなげに壊してみせたのです!
【この映画の好きなとこ】
◾︎奥田右京亮 (真田広之)
奉行とは思えぬその若さと華やかさは、さながら江戸に迷い込んだ宇宙人。真田の経歴初となる悪役を軽快に演じており、そのインパクトで映画史に刻まれる。
◾︎九蔵 (蟹江敬三)
おけら長屋に潜り込んだ奥田右京亮配下の殺し屋。その風貌からは想像し難い程の凄腕で、千葉真一演じるわらべや文七との死闘で場を攫った。
◾︎旗本愚連隊
ケバケバしい衣装とメイクで群れる旗本の不良軍団。いいように使われ切り捨てられる悲哀は、深作監督作品『仁義なき戦い』の世界観に通じる。堤大二郎が頭を演じた。
◾︎おふくとのサイドストーリー
主水が言い寄る飲み屋のおかみ。テレビシリーズでは描かれる事のない主水の色恋沙汰。主水を一介の男として描くあたりが深作流。
◾︎オープニングタイトルシークエンス
中村啓二郎作曲のテーマ曲"大殺陣"のカッコよさ!そして画面いっぱいに映し出される"深作欣二監督作品"!シビレた!
日本映画史上最高のタイトルシークエンスじゃない?
◾︎詮議
「事件の証拠品など受け取っていない」と右京亮から事件をうやむやにされる主水。右京亮のゾッとするような無言の圧力と、背後から睨みを効かせる小姓の不気味さで、絶大なるインパクトを与えたシークエンス。
◾︎的争い
早い者勝ちで的を争う事になった主水とわらべや文七。先を越された主水が現場から必死の逃走を見せるなど、必殺必中の仕事人らしからぬ狼狽ぶりを見せるのも深作ならでは。
◾︎頼み人お弓の顛末
少な過ぎる仕事料に呆れて帰ろうとする仕事人達に、頼み人のお弓が泣きつくシーンや、身売りをするも客を取れなく途方に暮れるシーンなどを丁寧に描く事で、頼み人側にもドラマを持たせた。仕事人の活躍ばかりでなく脇役にも光を当てるのが深作演出。
◾︎奥田右京亮の過去
陰間茶屋にいた右京亮の近辺で立て続けに起こる不審死が、フラッシュバックで語られるシーン。若き右京亮の顔をシルエット処理にした事で、"心の闇"を想像させる巧みな演出。
◾︎菊の墓参り
上様の慰み者とされ、井戸に身を投げた菊の地蔵に花をたむける右京亮。その慈悲深い眼差しから、更に謎めく右京亮の正体。
◾︎わらべや文七対九蔵
マカロニウェスタンのような決闘シーン。吹き荒れる風!舞い上がる枯葉!これがクライマックスじゃないなんて贅沢過ぎる。
美術も完璧!絶対動画で観て!
◾︎右京亮の正体
ついに牙を剥いた右京亮。その豹変ぶりが圧巻!江戸弁と現代語をごちゃ混ぜにした独創的な言葉使いも、洗練された奉行の真逆を行くものであり、鮮やかな変化が楽しめる。
◾︎仕事人対奥田右京亮
本性を見せた右京亮と一派の豹変ぶりが凄まじく、仕事人達が霞む程の華やかさと壮絶さに彩られたクライマックス。真田広之の殺陣の美しさや、群衆を動かす深作の突出した演出術に心酔。
真田広之のひたすら美しい殺陣!これそプロの美意識!
本作の製作は順風満帆では無かったようで、深作は本作の制作で孤立していたそうです。出演者、スタッフ共にうんざりする程繰り返されるリハーサルに、誰もが嫌な顔を隠さなかったとの事。しかし、自身の映画作りを貫いた深作監督に心から感謝します!だって結果こんな凄い作品を生み出してくれたのですから。
そして、繰り返し絶賛する真田広之が演じた奥田右京亮は、悪役史に残るキャラクターです。本来であれば、クライマックスの仕事人中村主水登場で拍手喝采となる場面も、右京亮に酔いしれるあまり「いい所なんだから主水出て来るんじゃないよー」と思ってしまうほど。必殺シリーズの大ファンであるボクがこんな思いをしたのは勿論初めてのことです。
テレビシリーズ、映画共に一応の終了を見せた必殺シリーズは、現在単発のスペシャルドラマとして製作され続けています。不定期スペシャルドラマとなると、実験的な意欲作を作る事は難しそうです。しかし、次世代の必殺へ向けた新たなチャレンジをいつか見せてほしいです。深作監督も、きっとそう思っているに違いないと考えると、この作品は深作欣二が必殺に宛てた遺言ではないかとすら思えるのです。
※2018年12月25日の投稿記事をリライトしました
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以前投稿した"アクション映画ランキングTOP20"
本作が何位にランキングされているのか興味ある方は是非覗いてみてください ↓















