東映に欣二と健太がいた日。

2000年 監督/ 深作欣二

それには2つの理由がありましたが、まずはなんといってもキャスティングですよね。藤原竜也前田亜希柴咲コウ栗山千明安藤政信など若者から支持を受ける旬の人気俳優陣。

そして、作品の暴力性について国会で議論が交わされ、ニュース番組で取り上げられるほど社会的関心を集めた話題性。

これらすべてが製作陣の仕掛けた宣伝・策略に思え、当時のボクは一歩引いてしまったのです。

だから2000年公開の超話題作『バトル・ロワイアル』が敬愛する深作欣二監督の最新作だとしても、当時は'"深作らしからぬ雇われのやっつけ仕事"と邪推し、劇場に足を運ぶ気になれなかったのです。

最終的に、"『バトル・ロワイアル』は少年犯罪を助長する"という国の判断によりR15作品に定められた際、「中学生は潜り込んでも観に来い」と世間を煽った深作監督の熱い思いも残念ながらボクのネガティブイメージを払拭してはくれませんでした。

そんなこともあり、『バトル・ロワイアル』初鑑賞は劇場公開が終了してからのDVD鑑賞となりましたが、結果的に先入観が作品鑑賞の質を下げたのは言うまでもなく、深作らしからぬビジュアルを冷めた目で見つめるだけに終わりました。それ以降『バトル・ロワイアル』は記憶の彼方に追いやられてしまったのです。


そんな初鑑賞から四半世紀を経た先日、YouTubeで『バトル・ロワイアル』本編のシーンが目に止まり眺めていたら、鬼気迫る演出と演技、そして台詞の素晴らしさに湧き上がる作品への好奇心を抑えられず、改めて本編を観直したくなったのです。

そしてこの度二度目の鑑賞となった『バトル・ロワイアル』。鑑賞開始間も無くボクは完全に『バトル・ロワイアル』の世界に没入していました!なんでこんなに変わるんだ!?


中学生が生き残りを賭けて戦う様に、個々の友情や敵対心、恋愛事情を生々しく絡め描いた作風は唯一無二!深作健太の脚本と深作欣二の演出が新たな化学反応を起こし、新しい深作エンターテインメントが誕生していたのです!!


マジ気づくの遅いって!!




【この映画の好きなとこ】


◾️台詞

名だたる4人の脚本家が書いた合計15もの脚本にNGを出した深作監督は、息子健太が書いた第一稿を読み脚本家としての正式採用を即決した。本作の熱量の半分は、深作健太による生々しくも熱い台詞の応酬だ!

※以下本文に健太氏の書いた名台詞の数々を、ピンク太文字にて記載します。



◾️女子11番 相馬光子 (柴咲コウ)

希代の悪女を演じた柴咲コウの圧倒的存在感と演技力を評価したい。これを観たクエンティン・タランティーノ監督から『キル・ビル』のゴーゴー夕張役としてオファーがあった話は有名(柴咲コウの辞退により実現せず)

柴咲コウは深作組でもっと活躍してほしかった



◾️女子2番 内海幸枝 (石川絵里)

タイプなので!!

女子学級委員長役!

こんなんズルイだろ!抗えんわ!

聡明なお嬢様って感じでいいよね!



◾️ゲームの説明

本編導入部ながら凄まじい緊張の連続で、大きな見せ場のひとつに数えられる。北野武の快演に呼応する生徒一人一人の反応も生々しく素晴らしい。短時間で複数生徒のキャラクターを印象付ける台詞の応酬も秀逸。


千草「先生、トイレ行っていい?」

栗山千明嬢


キタノ「今日は皆さんに、ちょっと殺し合いをしてもらいます」


バトル・ロワイアルといえばこの台詞だよね


キタノ「藤吉、私語してんじゃねえ!」

この台詞も有名


元渕「静かにしろ!説明が聞こえねえだろ!」

さすが男子学級委員長!やる気スイッチ早い



◾️女子4番 小川さくら

支給されたサバイバルバッグを涙目でキタノに投げつける。バトル・ロワイアルプログラムを否定し、参加拒否の強い意思表示をした最初の生徒として強い印象を残す。

カッコいいじゃんか!

怒りの涙目で睨みつけるさくら



◾️男子1番 赤松義生

遭遇したクラスメイトを敵と認識しパニックに陥る。また武器を紛失し「なにやってんだオレ!」と慌てふためく様も妙にリアル。

じゃじやーん!日本のランボー

ひえーっ!!こわい!!



◾️女子3番 江藤恵 vs 相馬光子

笑顔から一転、突如恵の腕を掴みスタンガン攻撃に転じる光子に戦慄!逃げる恵を追いかけ回す様はもはやサイコホラー。

ニコニコニコニコ…

…からの首切り!鎌がいいよね!



◾️男子6番 桐山和雄

停戦を呼びかける女子2名をマシンガンで射殺する桐山。瀕死の女子生徒の口元にスピーカーをあて、断末魔の叫び声を聴かせる病的なS描写で桐山の性格づけを見事にこなした。

桐山君はシャイだから喋らない



◾️女子10番 清水比呂乃 vs 相馬光子

本作で一、ニを争う名シーン。俳優の鬼気迫る演技も素晴らしいが、やはり最大の功績者は脚本家深作健太。原作に無いシーンをリアルな台詞で紡いだ。


清水「恵の武器持ってない?」

相馬「持ってないよ!」

清水「でも誰かそこに朝までいたみたいでね。トイレにタンポン捨ててあったんだ。恵脱がしてみたんだけど生理じゃなくてね。光子、生理昨日からだったよね?」

不良グループ2トップの仲間割れ


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比呂乃「テメェ何人も男咥えてるくせにひと()盗りやがって!好美に援交させたのもお前だろ!2人に首吊らせたのも本当はおめえなんじゃねえのかよ!前からムカついてたんだよ!ぶっ殺してやるよ!」

いろいろあったんだね…



◾️女子13番 千草 貴子

下心だけで言い寄る男子生徒にクールな反応を見せるが、キレると止まらない凶暴性を秘めている。男子生徒の股間めがけてナイフを振り下ろす様が強烈。


新井田「お前さ処女だろ」

千草「かっちーん。神様今なんて言ったのこのバカ」

栗山千明は顔芸が上手い。舞台も向いてそう


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新井田「死ぬ前にさ、お前だって一度ぐらいしたいだろ」

千草「あのね、そのろくでもないチンコより自分の命心配した方がいいと思うんですけど」

ホラーも出来るね!これヤバい


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千草「そうやって言い訳くさいとこが全身全霊大っ嫌いなんだよ!あたしの全存在をかけてあんたを否定してあげる」

この凶暴性が『キル・ビル』に繋がる



◾️灯台

女子グループが籠城する灯台に七原が現れたことから生じる亀裂。疑心暗鬼に駆られ自滅していく様が綿密に描かれた。本作のベストシークエンスとして推したい。

超弩級展開のミステリー要素も!

錯乱大会!

あーあ…



内海「七原のことならなんでもわかる。ねえ、この意味わかる?」

言われてみたい


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「ごめんね七原くん。あたしみんなのこと好きなの忘れてた」

この台詞クルよね

わかんねーよ!!



◾️光子の魔性

渾身のワンカット。男子生徒二名を誘惑し殺した光子の魔性、凶暴性、戦闘能力を遠景のサイレント、事後場面のみで描写した戦慄のカット。深作欣二はスゴい!

やむなし…男だもんね



◾️女子15番 中川典子 vs 相馬光子

可憐なヒロイン典子に向けたこの台詞は、光子の性格を熟知した健太氏ならではの素晴らしい仕事。


相馬「死ねよ、ブス」

「二人の王子様に守られてお姫様じゃん」も良かった

麗しの前田亜希ちゃんになんて口を利くんだオメエは



◾️ 男子11番杉村弘樹と女子8番琴弾加代子

密かに想いを寄せていた琴弾を探しあてた杉村だが、敵と思い込んだ琴弾からの銃弾を受けてしまう。琴弾を気遣う優しさと泣きじゃくる琴弾が切なすぎる。


杉村「好きだったんだ琴弾。ずっとずっと前から」

琴弾「なんで?一度も口きいたことなかったじゃない。喋ったこともなくてわかんないよ。あたし一体どうすればいいの?」

これマジでクルやつ

まさかの展開に…

マジ泣いたわ



◾️相馬光子の最期 ※ネタバレ

マシンガンの乱射を浴びるも、生への執念から撃たれては起き上がりを繰り返す深作演出!光子の魂の叫びが聴こえて来そうな鬼気迫る演技が圧巻。


バン!バン!


バン!バン!


これはもう女トニー・モンタナだ!



相馬「あたしただ奪う側にまわろうと思っただけよ」




いやあ、思いがけず脚本家深作健太の仕事ぶりに心酔しました。親の七光りで映画界入りをしただけにとどまらない、本物の才能を父親から受け継いだ本物の映画人だったんですね!

深作健太は本作での脚本家デビュー後、続く第2作『バトル・ロワイアルⅡ鎮魂歌』でも脚本を任されています。これは深作欣二監督が息子健太を一流脚本家と認めたことの証であり、『バトル・ロワイアル』の世界を創造出来るのは深作健太だけと見極めた証でもあると思います。


一方で本作が実質的な遺作となった『バトル・ロワイアル』で深作欣二監督が描いたものは、『仁義なき戦い』シリーズから続く "信用できない大人たちへの宣戦布告" です。『バトル・ロワイアル』を中学生に観て欲しかったという深作欣二は、次世代を担う若者に映画人生のすべてを詰め込んだこのメッセージを心底受け取って欲しかったのでしょう。


『バトル・ロワイアル』の発表後、末期の癌に侵された深作監督が自身最後の作品として選んだのが『バトル・ロワイアルⅡ鎮魂歌』でした。バトル・ロワイアル二部作を自身の集大成に位置付けていたのであれば、やはりボクが最初に思った"深作監督らしからぬ"は、とんでもない的外れで浅はかな邪推だったと猛省せねばなりません。


『バトル・ロワイアル』は深作欣二と深作健太でなければ描けなかった世界です。しかしそのメッセージは驚くほどシンプルでもあると思います。それこそが本編を締める七原秋也のモノローグに集約されているのではないかと思います。



七原「どこまででもいい。精一杯でいいから、走れ」





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