カウンセリングの手法のひとつに、「認知行動療法」というものがあります。


先日、中央労働災害防止協会で国立精神・神経医療研究センター認知行動療法センターの医師から詳しく聴き取りました。


うつ病など精神的な疾病の治療にこの「認知行動療法」が使われているので知っている人もたくさんいると思います。要点をまとめると次の通りです。


人間には、気持ちが動揺したときに頭の中に瞬間的に浮かんでくる考えやイメージがあります。これを「自動思考」とよんでいます。


自分が見ている「事実」は、実は自分なりの解釈でしかありません。客観的な「真実」は、また別のところにある可能性があるのです。そのとき、自分の解釈に縛られずに、すこし立ち止まって現実に目を向けることが大切です。


そうすると新しい現実が見えてきて、気持ちが楽になるのです。


この「自動思考」の基礎となっているその人なりの「こころのくせ」を「スキーマ」といいます。


「自動思考」のように、その場その場で瞬間的に浮かんでくる考えやイメージとは違って、その人がずっと持ち続けている基本的な人生観や人間感です。生まれながらの素質と生きる環境の要因の影響を受けながら、それまでの体験を通して形作られた個性的な確信のことをいいます。


これが、「こころの規則」となって考え方や行動をコントロールします。


「スキーマ」は、心の中でずっと続いているもので、自分にとってごく当たり前であって、自然に受け入れているものです。そのため、最初からそれに気付くことはたいへん難しい。


「認知行動療法」では、まず自動思考に注目して認知の歪みを修正し、現実に目を向けながら問題を解決していきます。

そして次の段階で「こころの規則」に目を向けていくのです。


これからは、病気になった人だけを対象にするのではなく、ストレスを抱える人は、また現在抱えていない人でも、いつ何時心の病気になるかも知れず、それを防止するためにも、ぜひ定期的にカウンセリングを受けることをお勧めします。


欧米では、政治家や経営者など、その分野のリーダーたちは、心理カウンセラーと契約し、常に「こころの規則」を整え、厳しい現実に対処しています。


日本では未だこのような慣例はありませんが、近い将来、欧米のようなかたちになっていくのではないかと思いますね。