社団法人土壌環境センターの「リスク評価活用方法検討部会」の中に4つの分科会、いわゆるワーキンググループがあります。活用方法検討WG、モデル要件検討WG、曝露モデルWG、毒性評価WGです。私は、この5月まで、活用方法検討WGに所属し、わが社の営業部長がそれを引き継ぐことになっています。


土壌汚染問題が発生した場合、今日まで日本では、汚染を全て外に持ち出しその土地のリスクをゼロにするという考え方や工法が用いられてきました。


「一生懸命」という言葉がありますが、実は、この語源は鎌倉時代の「一所懸命」に由来するそうです。つまり、鎌倉幕府が政権を取る際、それまで土地を所有していなかった武士や御家人に対して、戦で勝てば領地を保証するという約束を取り付け、力を発揮させたのですね。


つまり、今日、企業で当たり前のようにおこなわれている、成果について評価し、それが高ければ高額のボーナスを社員に与え、その結果、企業の価値も向上するというシステムを用いたのですね。もっとも、米国ではその手法が行き過ぎて破綻しかかっていますが。


必死になって闘い土地を得る。そして、それを守るためにまた必死に闘う。「一所懸命」思想とは、これなのです。その後、この考え方は今日まで日本で広く浸透しています。

それぐらい、土地に対する思い入れや執着心は強いのです。

そんなふうにして守ってきた土地に有害物質や廃棄物による汚染があれば、当然いやですよね。全部なくしてほしいですよね。土地の価値も下るならなおさらですよね。


だから「全てのリスクを取り除いてもらう」となるのです。


しかし、こんな高コストの対策ができるのはせいぜい東京や大阪など都市部の地域だけですね。将来の人口減少社会の様相を研究している私から見れば、もう、日本の土地の価格は上がることは絶対ないでしょうからね。


汚染があって買い手がリスクゼロを求めるならば、塩漬けにするしかない。そんな時代に入ってきました。


“これを何とかしなきゃあきまへん。”ということで、国は、その有害物質の毒性やそれがどのような経路で人体に入っていくのかなどを科学的に見極め、すなわち「リスク評価」を行って、汚染がそこにあっても毒性を抑えたり、人体に入る経路を遮断する対策工法の実施を促し、その工法を行政や研究者が認め、土地を動かそうと考えていますね。


「リスク評価手法」を確立するには、かなりの時間を要しますが、何が何でもしっかり作り上げていくしかないですね。


完全なものじゃなくても良いから、まず世に出すことです。


今週の金曜日、22日に大阪の「おおさかATCグリーンエコプラザ」でNPO法人が主宰する「土壌第三者評価員会」のシンポジウムが開催されます。私もパネラーとして参加します。
『この世の中には、リスクゼロなんてありえない。リスクをいかにコントロールするのかが大事だ。』
私はそこでそんなことを発言する気でいますので、読者の皆様、時間があればご参加ください。

株式会社淡海環境デザインホームページ
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