3月19日に、私が会長しているおおさか「ATCグリーンエコプラザビジネス交流会水・土壌汚染対策研究部会」で第32回目のセミナーを開催し、リスコミの事例発表やロールプレイングを行いました。行政や大手製造業の環境担当者などを中心に、60名ほどの方に熱心に聴講して頂きました。ありがとうございました。
また、ロールプレイングに参加して頂いたスタッフの方々にも感謝します。
たいへん好評でしたよ。
その中で、今、滋賀県でたいへん大きな問題になっている栗東市にある産業廃棄物処分場RDエンジニアリングの土壌・廃棄物問題について、近隣に住んでいる自治会の会長の話を聞きました。
この問題が取り上げられて、もう10年以上たったのですね。
その間、何ら対策や措置がなされず、放置されていますね。そして、2年前に土地所有者である事業者が破綻してしまったのです。
その後、住民と行政の話し合いがうまくいかず現在に至っているのですが、その間、大気への飛散や汚染地下水の敷地外流出がとどまらず、結局ステークホルダーの誰も(事業者、行政、住民)がウィンウィンの関係になりえず、処分場に隣接している住民だけがリスクを被るという構造になっていました。
そして、今回、この近隣の自治会が、県が提案している対策案に同意しました。
他の自治会は、かたくなに「廃棄物や汚染土壌の全量撤去」という、対策費が200億とも400億ともかかる工法に固執している中で、この自治会だけが、県の「止水壁と封じ込め工法」によって、まず大きなリスクを取り除くことを選択したのです。
私は、今回の問題について、滋賀県民として、また、土壌環境やリスコミの専門家としてこの自治会がとった行動に賛同し、深く敬意を表しています。
誰もが、リスクはゼロにして欲しいと願うものです。しかし、現実社会に生きる私たちにとってリスクがゼロというのはありえないことですね。重要なのは、リスクをどうコントロールしマネジメントするかですね。
このRDの場合でも、廃棄物が埋設され、有害物質が大気や水域に飛散や流出することで、地域社会にそれ相応の環境影響が出ているのは確かです。
しかし、戦後最悪の不況で、県の財政も圧迫している中で、莫大な費用を計上して廃棄物・汚染土壌を撤去することが果たして現実に可能なのか。また、撤去した廃棄物を持ち出す場合のリスクや運搬によって生じるリスクを想定してるのか、などを考えると自ずと方向性は決まってくるでしょう。
アメリカやヨーロッパ主要国ならどうするでしょうか?
それらの国々では、独自の「環境・健康リスク評価手法」を国の機関が作っています。それを駆使して対策の工法を決定していくでしょう。
私は、現在(社)土壌環境センターで、環境リスク評価手法を導入するための研究会に参加し研究していますが、アメリカのスーパーファンド法のガイダンスを基本に、近くわが国独自の評価手法ができあがると思いますよ。
世界のどこを見渡しても、RDのようなケースで全量掘削による対策はありえませんね。
もう、そろそろ、日本の情緒的なリスク思考を変えていくべきではないでしょうか。
今回講演して頂いた方に対して、他の自治会の住民から「何故、同意したのか?」という理不尽な言葉を投げられたこともあったとか。
どの地域にも、「その地域のことを考えているようで、実は自己実現を果たすための手段」として様々な発言をする人が必ずいらっしゃいますね。その声が大きければ大きいほど問題解決が遠のくことになります。
その中で、本当にその地域を助けるのは、勇気ある人々の行動に他なりません。
今後とも、滋賀県民としてRD問題の推移について見つめ続けていきます。
株式会社淡海環境デザイン