2014年10月20日、虎之助は虹の橋を渡った。
あれから2年の月日が経った。
その度ごとに、思い出した。
その度ごとに、涙した。
虎之助は、およそ14年ほど、この世に生きた。
頑丈そうな身体つきだった。
30歳くらいまで一緒にいられるのではないかと、実は思っていた。
しかし、虎之助は小さなときから、口腔内には問題を抱えていた。
子猫のとき、ほとんど鳴かず、少し、苦み走った顔をしていた。
それは、口の中が痛かったからかもしれない。
おそらく3歳くらいになった頃か、抜歯手術を行った。
そのことによって、口の中の問題は解決したとばかり思っていた。
実際、手術のあとは、よく鳴くようになった。
ときには、猫とは思えないような、変なことをしゃべっていた。
ブツブツと独り言のようなものを発していたことがある(しかも食事をとりながら)。
だが、やはり今思えば、口の中は、決して万全ではなかったのだ。
悪性腫瘍が上顎を蝕んでいたのだった。
牙のような歯が、ある日からとつぜん、口からはみだしていた。
口のなかに収まらなくなっていた。
それでも痛がっている様子はなかった。
ごはんもしっかりと食べていた。
しかしそれから少しして、水をのむときに、その水に血がにじむようになった。
歯のあたりから出血がはじまったのである。
病院に連れてゆき、さまざまな処置を行った。
まだそのときも食欲はあった。
それが、急激に、血の量が増え、食べることができなくなった。
無理やりシリンジで喉へと流し込んだこともあった。
それでも、その日がそんな突然にやってくるとは、思ってもみなかった。
病院に連れて行って、帰ってきたその日。
それは私の誕生日の次のだった。
虎之助は、昼ころより嘔吐、失神を起こし、生死をさまよった。
そして、あっという間にその日のうちに、息をひきとった。
……それが2年前。
今、私のそばには、「ゆいた」くん(2歳)がいる。
ゆいたは、おそらく10月生まれ。
少し怪我をしているところを保護され、縁あって、我が家にやってきた。
虎之助とゆいたは色と顔も性格もまったく違っている。
虎之助はおっとりでマイルド、ゆいたはどっしりでシャープ。
だが、彼らは、何かでつながっているように思えてならない。
猫の「精」が私たち夫婦に授けてくださった、1つのいのち、のように思えてしまう。
そう思いたい。
でも、でも、なお、虎之助のことを思うと、切ない。
なぜだろう