読んだ本
まちの見方・調べ方 地域づくりのための調査法入門
西村幸夫、野澤康 編
朝倉書店
2010.10
ひとこと感想
都市計画系の学生やまちづくり計画を策定しようとする人たち向けに、わかりやすく書かれた本。常に「現場から考える」ことを勧め、「調査のための調査」になってはならぬということが、強調されている。
西村は、福岡県生まれ。1977年東京大学都市工学科卒・同大学院修了。現在、東京大
学先端科学技術研究センター教授。野澤は1964年北海道生まれ。93年東京大学大学院工学系研究科博士課程修了。現在、工学院大学工学部建築都市デザイン学科教授。
***
「まちづくり」のための調査法を概説している。
主に地図と古文書から歴史的変遷をたどり、現地でフィールドを行い、統計その他の方法で分で気を行うという流れ。ただ、何よりも「調査」の目的を忘れずに現場主義に立って、「研究」をするべきだという姿勢が貫かれている。つまり、「研究」のアウトプットは地域づくりに貢献すべきであり、誰のための地域づくりかを考え直すべきだとして結ばれている。
***
景観の経済分析手法
・代替
・トラベルコスト
・ヘドニック
・CVM(仮想市場評価)
・コンジョイント
・産業連関
環境の経済学の基礎
・環境は市場が機能しない分野の一つ(外部不経済など)
・自然公園(公共財)は独占的、非排他的に楽しむことはできない(維持費用は市場を通じて受益者が負担するわけではない) (→ 市場の失敗)
・市場ですべてのデータが収集できるとはかぎらない
利用形態による景観の価値分類(青山 2003: 38)
利用価値
直接的
間接的
オプション
非利用価値
遺産
代位
存在
***
目次
第1部 事実を知る
歴史を知る
地形を知る
空間を知る (インフラ、建物)
生活を知る (統計や地図から)
計画・事業の履歴を知る
第2部 現場に立つ・考える
現場で「見る」「歩く」 (サーヴェイ)
現場で「聞く」 (ヒアリング)
ワークショップをひらく (現場にニーズを掘り下げる)
地域資源・課題の抽出 (可能性の「タネ」)
第3部 現象を解釈する
統計分析のための手法と道具 (定量他)
住環境・景観を分析する
地域の価値を分析する
GISを用いた分析
自分たちの住まいの環境に関心を有する人に幅広く向けて発信された地域調査法入門書。現場主義の調査方法を、歴史・地形・住民生活・計画・統計手法などといった視点から解説する。
まちの見方・調べ方―地域づくりのための調査法入門 3,360円 Amazon |