観た動画
On Your Mark
Real Cast:製作
宮崎駿とスタジオジブリ:制作
1995年7月15日
(スタジオ・ジブリの映画「耳をすませば」上映時に同時公開)
(楽曲は、ヤマハ、1994年8月3日)
ひとこと感想
チャゲアスのライブのために制作された映像。翼の生えた少女をめぐる物語。地球が放射能汚染された未来が舞台で、人類は地下生活を営んでいる。少女が何を意味するのか、いくつかの解釈が可能である。
*紹介してくださったMNBさん、ありがとうございます。
***
昨日、Facebookで某雑誌の副編集長の方が、「アッチはASKA、あてしはASUKA」と書いているのをみて、はじめて、チャゲ&飛鳥の「あ・す・か」が「U]がなく「ASKA」であることを知った。
ただし以下では、面倒なので「チャゲアス」という略称を使用させていただく。
本作は、ライブで「On Your Mark」を演奏する際の演出として使用するためにチャゲアスがジブリに依頼して作成されたものである。
元の曲は、作詞作曲が飛鳥涼。
ただし歌詞をふつうに読んでみても、ほとんど意味がつかめず、かなり、とんでいる。
***
とは言え、まず歌詞だけをみてみよう。
登場人物は「君と僕」である。
また、この二人は、まだ「若すぎる」というから、子どもか、それとも10代、場合によっては20代、と考えられる。
タイトル(On Your Mark)は、「位置につけ!」ということである。
当然、「位置」についたあとは、「よーい、どん」となる。
彼らは「走り出す」。
しかし彼らは、常に「流行(はやり)の風邪」をひく。
「はやりのかぜ」というのがどういう比喩なのかは、前後の言葉で考えるしかない。
この文章の前で「自転車」が登場する。
したがって、「二人で自転車に乗っていると、いつも流行の風邪をひいた」ということになる。
また、それでも二人は「止(や)めない」。
「やめない」理由は、「夢の斜面見上げて 行けそうな気がする」からであるという。
「夢の斜面」を見上げつつ、その斜面を自転車で駆け上がって行けそうだ、しかし、いつもそうしようとすると風邪をひいてしまう若い二人、ということになるだろうか。
では、「夢の斜面」とは何を表すのか。
仮にこれを「常に成長・開発・進歩が続けられると夢見た近代社会(もしくは戦後社会)」のイメージと考えてみると、前述の「はやりの風邪」とは、公害や汚染などを指す可能性がもたらされる。
もっと言えば、「核兵器」や「原発」がある「世界」と言ってもいちおうの意味は通じる。
しかも、二人は「これを無くせない」と言っている。
「これ」についても明示されていないが、私が仮定した「核兵器」や「原発」であるとすれば、「これを無くせない」理由が、「夢の心臓めがけて、僕らと呼び合うため」であるというのも、自分たちの欲望や意識の根源に、「核兵器」や「原発」を呼びこむものがある、と考えられないこともない。
***
実際、チャゲアスが歌っている「雰囲気」からすると、特に政治色が全面に出ているわけでもなく、「普通」のラブソングを歌っているかのような、ある種のさわやかさを伴っている。
ただ、今の時点で私たちがこの歌詞を読むと、「それでもやめない」「これを無くせない」と言って、「夢の心臓」や「夢の斜面」に走り出すことを描くのは、幻覚などをもたらす薬物によるものではないかとも疑えてしまう。
***
この楽曲を宮崎駿は、どう解釈したか。
以下は、映像を見ながら、その流れを追いかけてみる。
映像に登場する二人の警官は、明らかにチャゲアスの二人をイメージしている。
舞台は、のどかな田園風景ではじまるも、その中にどす黒い不気味な建造物が現れる。
「放射線管理区域」を表す標識があるので、汚染された場所であることが分かる。
イメージとしては、やはり、都心ではなく、地方の原発だろうか。
しかしイントロが終わって歌がはじまると、場面は一転し、都市の夜景となる。
黒い高層の建物が乱立し、そのあいだを警察のジェット・ヘリが何台も飛ぶ。
ある建物を襲撃するのだが、このビルには「神はあなたを見ている」というネオンがあり、「聖NOVA'S CHURCH・・・」と書いてある。
イメージとしては何かを信仰している教団のようなところのようで、人々は白装束に赤い三角の頭巾をかぶっている。
警官たちは躊躇なくビルに突入し、彼らをすべて殺戮する。
そして最後に一人の、羽のある少女を、(警官である)チャゲアスは見つける。
どうやら警察がここに踏み込んだは、この少女が目的であったようだ。
この少女は、鎖に繋がれていたので「救い出した」ようであるが、このあたりはぼかされている。
このあと少女は警察のヘリに乗せられるのだが、その際に彼女は、放射線管理区域マークのある袋に入れられている。
彼女が汚染されてしまっているということなのか、それとも彼女自体が放射能なのか、ここも、ぼかされている。
任務の終わったチャゲアスは、レトロな感じの居酒屋のようなところで、浮かない顔をして、酒を飲んでいる。
どうやら、少女を見つけたあとの扱いに、不満があるらしい。
(メニュー札が壁にかかっているが、「塩サバ(合成)」とか「バイオタコ酢」とか「本物やきとり」「本物めざし」などが並んでいる)
救い出すこと、と、その後の扱い、は別の意味をもっているのか。
救い出しすまでは良かったが、実際にその後の扱いを見て、違和感を抱いたのか。
その後、チャゲは何かを工作し、アスカはパソコンをいじり、何かを画策している。
(ちなみに二人とも、煙草を吸っている)
二人はその後、タイベックの防護服を着て放射線管理区域に潜入する。
少女のいるところは、厳重に管理されている。
少女のまわりには強力なバリアのようなものが張られているが、チャゲがつくった装置で解除される。
少女をどんな目的で警察が使おうとしているのかは明示されないが、少なくとも大勢の人を犠牲にしてでも取り戻そうとするに値するもの、である。
しかも少女はある意味では「汚染の象徴」であるので、とりあえず仮に、「ウラン」とすることも可能であるように思える。
この羽のはえた少女は、「ウラン」ちゃんだったのである。
しかし彼女を救出するさなか、二人は警察に追い詰められ、空中に張り巡らされた高速道路から落下して、命を落とす・・・
このあたり、真偽は定かではないが、漠然と映像を見ると、囚われていた少女をチャゲアスが救出する英雄物語にすぎないのであるが、よく考えてみると、かなり不気味な光景が繰り広げられていることは確かである。
***
・・・実は、映像はこれで終わっていない。
二人が命を落とすまでにみた「幻覚」として、その高速道路から無事に脱出でき、少女を田園部に連れてゆくシーンが続く。
チャゲアスが少女を「戻す」場所は、映像の冒頭に出ていた田園風景である。
都市部から田園部に移る際には、長いトンネルを経る。
つまり都市部は地下に造られており、人々は今、そこで暮らしていることが分かる。
ここからトンネルを出ようとするところには、いくつかの注意書きがある。
「太陽の光に注意」「命の保障はない」(いずれもなぜか中国語)
トンネルを抜け出すと、今度は英語で「EXTREME DANGER」とあり、例の黒い建造物(原発?)が見えてくる。
一見のどかに見えたこの田園風景であるが、実は、人や動物の気配がない。
ただ植物だけが、鬱蒼と生えている。
ということは、大地は汚染されてもう人が住めなくなっている世界、ということになるのであろうか。
チャゲアスが少女をこの地に再び戻したところで映像は上空から、走る車をとらえる。
だがしばらくして、車は停車、すなわち、二人が絶命したことを示唆して映像は終わる。
つまり、二人は、「幻覚」のなかで、少女を無事に連れ戻したと思い描いて死んでゆくのである。
***
舞台設定は、これである程度明白になる。
(以下、私の考えた大雑把なイメージである)
元々住んでいた大地は原発で汚染され、住めなくなっている。
人々は地下に都市を建造し、暮らしていた。
しかし地下で暮らすにも、やはり「エネルギー」が必要である。
人々は以前よりもまして原発に依存し、ウランは貴重な資源で奪い合いになる。
ある教団はこれを信仰の対象としていた。
警察はこれを奪い返し、都市のために使おうとしていた。
だが、チャゲアスは、この扱いに疑問をもった。
ウランは、そのまま大地に返すべきではないか、と。
そこで彼らはウランを取り戻し、危険を承知でもとの大地に還そうとする。
だが、その試みの途中でチャゲアスは死亡する。
夢のなかでは、無事にウランは大地に還されるが・・・。
・・・と考えると、元の歌詞が、まだ人々が大地で暮らしていた頃を描いており、映像は、その後、を描いている、と理解できるのではないだろうか。
僕らがそれでも止めないのは
夢の斜面見上げて 行けそうな気がするから
僕らがこれを無くせないのは
夢の心臓めがけて 僕らと呼び合うため
(歌詞の一部、抜粋)
もちろん、他の解釈も多様に可能であろうし、むしろそうすべきであるが、現在の私にとっては、こうした情景が見えてきたのだった。
On Your Mark
Real Cast:製作
宮崎駿とスタジオジブリ:制作
1995年7月15日
(スタジオ・ジブリの映画「耳をすませば」上映時に同時公開)
(楽曲は、ヤマハ、1994年8月3日)
ひとこと感想
チャゲアスのライブのために制作された映像。翼の生えた少女をめぐる物語。地球が放射能汚染された未来が舞台で、人類は地下生活を営んでいる。少女が何を意味するのか、いくつかの解釈が可能である。
*紹介してくださったMNBさん、ありがとうございます。
***
昨日、Facebookで某雑誌の副編集長の方が、「アッチはASKA、あてしはASUKA」と書いているのをみて、はじめて、チャゲ&飛鳥の「あ・す・か」が「U]がなく「ASKA」であることを知った。
ただし以下では、面倒なので「チャゲアス」という略称を使用させていただく。
本作は、ライブで「On Your Mark」を演奏する際の演出として使用するためにチャゲアスがジブリに依頼して作成されたものである。
元の曲は、作詞作曲が飛鳥涼。
ただし歌詞をふつうに読んでみても、ほとんど意味がつかめず、かなり、とんでいる。
***
とは言え、まず歌詞だけをみてみよう。
登場人物は「君と僕」である。
また、この二人は、まだ「若すぎる」というから、子どもか、それとも10代、場合によっては20代、と考えられる。
タイトル(On Your Mark)は、「位置につけ!」ということである。
当然、「位置」についたあとは、「よーい、どん」となる。
彼らは「走り出す」。
しかし彼らは、常に「流行(はやり)の風邪」をひく。
「はやりのかぜ」というのがどういう比喩なのかは、前後の言葉で考えるしかない。
この文章の前で「自転車」が登場する。
したがって、「二人で自転車に乗っていると、いつも流行の風邪をひいた」ということになる。
また、それでも二人は「止(や)めない」。
「やめない」理由は、「夢の斜面見上げて 行けそうな気がする」からであるという。
「夢の斜面」を見上げつつ、その斜面を自転車で駆け上がって行けそうだ、しかし、いつもそうしようとすると風邪をひいてしまう若い二人、ということになるだろうか。
では、「夢の斜面」とは何を表すのか。
仮にこれを「常に成長・開発・進歩が続けられると夢見た近代社会(もしくは戦後社会)」のイメージと考えてみると、前述の「はやりの風邪」とは、公害や汚染などを指す可能性がもたらされる。
もっと言えば、「核兵器」や「原発」がある「世界」と言ってもいちおうの意味は通じる。
しかも、二人は「これを無くせない」と言っている。
「これ」についても明示されていないが、私が仮定した「核兵器」や「原発」であるとすれば、「これを無くせない」理由が、「夢の心臓めがけて、僕らと呼び合うため」であるというのも、自分たちの欲望や意識の根源に、「核兵器」や「原発」を呼びこむものがある、と考えられないこともない。
***
実際、チャゲアスが歌っている「雰囲気」からすると、特に政治色が全面に出ているわけでもなく、「普通」のラブソングを歌っているかのような、ある種のさわやかさを伴っている。
ただ、今の時点で私たちがこの歌詞を読むと、「それでもやめない」「これを無くせない」と言って、「夢の心臓」や「夢の斜面」に走り出すことを描くのは、幻覚などをもたらす薬物によるものではないかとも疑えてしまう。
***
この楽曲を宮崎駿は、どう解釈したか。
以下は、映像を見ながら、その流れを追いかけてみる。
映像に登場する二人の警官は、明らかにチャゲアスの二人をイメージしている。
舞台は、のどかな田園風景ではじまるも、その中にどす黒い不気味な建造物が現れる。
「放射線管理区域」を表す標識があるので、汚染された場所であることが分かる。
イメージとしては、やはり、都心ではなく、地方の原発だろうか。
しかしイントロが終わって歌がはじまると、場面は一転し、都市の夜景となる。
黒い高層の建物が乱立し、そのあいだを警察のジェット・ヘリが何台も飛ぶ。
ある建物を襲撃するのだが、このビルには「神はあなたを見ている」というネオンがあり、「聖NOVA'S CHURCH・・・」と書いてある。
イメージとしては何かを信仰している教団のようなところのようで、人々は白装束に赤い三角の頭巾をかぶっている。
警官たちは躊躇なくビルに突入し、彼らをすべて殺戮する。
そして最後に一人の、羽のある少女を、(警官である)チャゲアスは見つける。
どうやら警察がここに踏み込んだは、この少女が目的であったようだ。
この少女は、鎖に繋がれていたので「救い出した」ようであるが、このあたりはぼかされている。
このあと少女は警察のヘリに乗せられるのだが、その際に彼女は、放射線管理区域マークのある袋に入れられている。
彼女が汚染されてしまっているということなのか、それとも彼女自体が放射能なのか、ここも、ぼかされている。
任務の終わったチャゲアスは、レトロな感じの居酒屋のようなところで、浮かない顔をして、酒を飲んでいる。
どうやら、少女を見つけたあとの扱いに、不満があるらしい。
(メニュー札が壁にかかっているが、「塩サバ(合成)」とか「バイオタコ酢」とか「本物やきとり」「本物めざし」などが並んでいる)
救い出すこと、と、その後の扱い、は別の意味をもっているのか。
救い出しすまでは良かったが、実際にその後の扱いを見て、違和感を抱いたのか。
その後、チャゲは何かを工作し、アスカはパソコンをいじり、何かを画策している。
(ちなみに二人とも、煙草を吸っている)
二人はその後、タイベックの防護服を着て放射線管理区域に潜入する。
少女のいるところは、厳重に管理されている。
少女のまわりには強力なバリアのようなものが張られているが、チャゲがつくった装置で解除される。
少女をどんな目的で警察が使おうとしているのかは明示されないが、少なくとも大勢の人を犠牲にしてでも取り戻そうとするに値するもの、である。
しかも少女はある意味では「汚染の象徴」であるので、とりあえず仮に、「ウラン」とすることも可能であるように思える。
この羽のはえた少女は、「ウラン」ちゃんだったのである。
しかし彼女を救出するさなか、二人は警察に追い詰められ、空中に張り巡らされた高速道路から落下して、命を落とす・・・
このあたり、真偽は定かではないが、漠然と映像を見ると、囚われていた少女をチャゲアスが救出する英雄物語にすぎないのであるが、よく考えてみると、かなり不気味な光景が繰り広げられていることは確かである。
***
・・・実は、映像はこれで終わっていない。
二人が命を落とすまでにみた「幻覚」として、その高速道路から無事に脱出でき、少女を田園部に連れてゆくシーンが続く。
チャゲアスが少女を「戻す」場所は、映像の冒頭に出ていた田園風景である。
都市部から田園部に移る際には、長いトンネルを経る。
つまり都市部は地下に造られており、人々は今、そこで暮らしていることが分かる。
ここからトンネルを出ようとするところには、いくつかの注意書きがある。
「太陽の光に注意」「命の保障はない」(いずれもなぜか中国語)
トンネルを抜け出すと、今度は英語で「EXTREME DANGER」とあり、例の黒い建造物(原発?)が見えてくる。
一見のどかに見えたこの田園風景であるが、実は、人や動物の気配がない。
ただ植物だけが、鬱蒼と生えている。
ということは、大地は汚染されてもう人が住めなくなっている世界、ということになるのであろうか。
チャゲアスが少女をこの地に再び戻したところで映像は上空から、走る車をとらえる。
だがしばらくして、車は停車、すなわち、二人が絶命したことを示唆して映像は終わる。
つまり、二人は、「幻覚」のなかで、少女を無事に連れ戻したと思い描いて死んでゆくのである。
***
舞台設定は、これである程度明白になる。
(以下、私の考えた大雑把なイメージである)
元々住んでいた大地は原発で汚染され、住めなくなっている。
人々は地下に都市を建造し、暮らしていた。
しかし地下で暮らすにも、やはり「エネルギー」が必要である。
人々は以前よりもまして原発に依存し、ウランは貴重な資源で奪い合いになる。
ある教団はこれを信仰の対象としていた。
警察はこれを奪い返し、都市のために使おうとしていた。
だが、チャゲアスは、この扱いに疑問をもった。
ウランは、そのまま大地に返すべきではないか、と。
そこで彼らはウランを取り戻し、危険を承知でもとの大地に還そうとする。
だが、その試みの途中でチャゲアスは死亡する。
夢のなかでは、無事にウランは大地に還されるが・・・。
・・・と考えると、元の歌詞が、まだ人々が大地で暮らしていた頃を描いており、映像は、その後、を描いている、と理解できるのではないだろうか。
僕らがそれでも止めないのは
夢の斜面見上げて 行けそうな気がするから
僕らがこれを無くせないのは
夢の心臓めがけて 僕らと呼び合うため
(歌詞の一部、抜粋)
もちろん、他の解釈も多様に可能であろうし、むしろそうすべきであるが、現在の私にとっては、こうした情景が見えてきたのだった。
- ジブリ実験劇場 ON YOUR MARK [VHS]/ポニーキャニオン

- ¥2,916
- Amazon.co.jp
