読んだ作品
おれは見た
中沢啓治
別冊月刊少年ジャンプ
集英社
1972年10月
再録
平和の鐘シリーズ 17 ほるぷ出版 1982年
漫画家たちの戦争 原爆といのち 中野晴行監修 金の星社 2013年2月
これまでの中沢啓治関連記事
黒い雨にうたれて(中沢啓治)と西城秀樹
追悼・中沢啓治
***
「血のペンで描く 衝撃の自伝」というのが、すごい。
本作が掲載されたのちに、「はだしのゲン」が「少年ジャンプ」に連載される。
漫画家が自叙伝を描くという企画のトップバッターに、原爆被害の体験が描かれたというからして、集英社の企画自体がまず凄い。
しかも当時の編集長はこの作品だけでは言い足りないだろうから週刊連載で描いてみないか、と勧められたのだそうだ。
こちらを参照。
***
中沢が広島で原爆被害にあったのは、小1のときだった。
朝、空襲警報があり、眠たい目をこすりながら防空壕に入るが、警報が解除される。
再び戻ってきたB29に対して警報はなかった。
中沢はそのとき、B29 の飛行雲を見るが、そのあと、たたまた学校の塀によって爆風や熱風を直接浴びずに済む。
とはいえ、しばらく気を失っており、気づくと、ほほに五寸釘が刺さっていたという。
「白い服を着ていた人はやけどがすくなく服からでた部分だけ皮膚がとけていた。白い服は原爆の光を反射させたのだ」
中沢が家に戻ってみると、母親はちょうど子供が生まれ、無事だったが、父と姉、弟は家の下敷きになって死亡。
母はちょうどせんたくものをほしていたときにやられて、ものほしごと吹き飛ばされ傷はなかった。
姉は即死だが、父と姉はしばらく苦しみの声をあげていたが、火災にあいどうにもならなくなってしまった。
その後、長男と次男が戻り、5人の暮らしがはじまる。
中沢は、頭と首に火傷を負い、これがなかなか治らず、膿が悪臭を放った。
赤子は、栄養失調で4ヶ月で死亡。
・・・と、ある意味、淡々と当時のことが描かれる。
もちろん部分的には脚色はあるようだが、並大抵の生々しさではない。
四半世紀が過ぎて、それでもその根源にある「怒り」が、中沢の作品には滲み出ている。
いわゆる「原爆文学」においても、これほどまでにストレートに「怒り」が伝わってくる作品はないであろう。
「怒り」といっても、ジョージ秋山の銭ゲバやアシュラのように、人間の根源的な我欲や社会に対する怒りや憎しみではなく、もっと直接的に、原爆を落とした米国(軍)、そして、戦争をやめなかった日本(軍)の幹部たち、彼らへの「恨み」である。
おれは見た
中沢啓治
別冊月刊少年ジャンプ
集英社
1972年10月
再録
平和の鐘シリーズ 17 ほるぷ出版 1982年
漫画家たちの戦争 原爆といのち 中野晴行監修 金の星社 2013年2月
これまでの中沢啓治関連記事
黒い雨にうたれて(中沢啓治)と西城秀樹
追悼・中沢啓治
***
「血のペンで描く 衝撃の自伝」というのが、すごい。
本作が掲載されたのちに、「はだしのゲン」が「少年ジャンプ」に連載される。
漫画家が自叙伝を描くという企画のトップバッターに、原爆被害の体験が描かれたというからして、集英社の企画自体がまず凄い。
しかも当時の編集長はこの作品だけでは言い足りないだろうから週刊連載で描いてみないか、と勧められたのだそうだ。
こちらを参照。
***
中沢が広島で原爆被害にあったのは、小1のときだった。
朝、空襲警報があり、眠たい目をこすりながら防空壕に入るが、警報が解除される。
再び戻ってきたB29に対して警報はなかった。
中沢はそのとき、B29 の飛行雲を見るが、そのあと、たたまた学校の塀によって爆風や熱風を直接浴びずに済む。
とはいえ、しばらく気を失っており、気づくと、ほほに五寸釘が刺さっていたという。
「白い服を着ていた人はやけどがすくなく服からでた部分だけ皮膚がとけていた。白い服は原爆の光を反射させたのだ」
中沢が家に戻ってみると、母親はちょうど子供が生まれ、無事だったが、父と姉、弟は家の下敷きになって死亡。
母はちょうどせんたくものをほしていたときにやられて、ものほしごと吹き飛ばされ傷はなかった。
姉は即死だが、父と姉はしばらく苦しみの声をあげていたが、火災にあいどうにもならなくなってしまった。
その後、長男と次男が戻り、5人の暮らしがはじまる。
中沢は、頭と首に火傷を負い、これがなかなか治らず、膿が悪臭を放った。
赤子は、栄養失調で4ヶ月で死亡。
・・・と、ある意味、淡々と当時のことが描かれる。
もちろん部分的には脚色はあるようだが、並大抵の生々しさではない。
四半世紀が過ぎて、それでもその根源にある「怒り」が、中沢の作品には滲み出ている。
いわゆる「原爆文学」においても、これほどまでにストレートに「怒り」が伝わってくる作品はないであろう。
「怒り」といっても、ジョージ秋山の銭ゲバやアシュラのように、人間の根源的な我欲や社会に対する怒りや憎しみではなく、もっと直接的に、原爆を落とした米国(軍)、そして、戦争をやめなかった日本(軍)の幹部たち、彼らへの「恨み」である。
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