青山学院短大で子どもの育ちの場のことを研究している菅野先生が参加してくれたある日の記録。毎日一緒にいる母たちとはまた違う視点で綴っていただきました。

 

冬のよく晴れた日のおひさま。

私がお邪魔した日は見学日になっており、二組の親子が見学に来られていました。

見学の人がいようといまいと、“おはよう”の時から子どもたちは、いつも通り。名前を呼ばれても「はーい」とまともな返事が返ってくることの方が少ないです。いつもなら笑ってやり過ごせる子どもたちのふるまいが、外の人の目がある分、私も気になってしまいます。今日くらいちゃんとしてよーという大人の思いが子どもに見透かされているようにも思えてきます。

 

見学のお子さんに対しても容赦がありません。自分たちの遊びに入ってこようとしようものなら、「来ちゃダメ」「触っちゃダメ」。この日も、Uちゃんと私が遊んでいるところを見学のお子さんが見ていると、Uちゃんは「ついて来ないで!」と強い一言。こういうおひさまの子どもの態度に見学の親御さんの方がびっくりしてしまうということはよくあることです。子どもたちが拒絶とも思えるような強い態度をとってしまうのにはわけがあります。ひとつはおひさまの子どもたちの仲間意識の現われ。自主保育の子どもたちは、バラバラに遊んでいるように見えて、仲間の内と外を敏感に感じています。新参者の子どもに対する「No」は、あなたは私たちの仲間ではないというメッセージでなのです。加えて、見学の場合通常親子で来られるため、新参者の子どもは親という盾があります。預け合いが基本の自主保育は、自分の親が当番だとしてもおうちのように甘えられるわけではありません。そうやって頑張っている子どもにとって、新参者の子どもが親に甘えようとするのは、あまり面白いことではありません。最後に、これはUちゃんの現在のおひさまでの地位に関係しています。Uちゃんはおひさまレギュラー陣の中では一番年少です。普段の活動ではUちゃん自身が年長の子に「来ないで」と言われることがあります。自分もそう言われて嫌なはずなのに、なぜ他の子に同じことをするのか。いつもはやられる側のUちゃんがやる側になることで、両方の立場が経験できます。やられる側と、やる側双方の立場を経験することに意味があると考えます。このように立場が入れ替わることで、子どもたちは人との多様な交わり方について学んでいるのではないかと考えます。

 

このような子どもの行動は外部の方には、なかなか理解してもらいにくいことなのですが、この日の見学の方はとてもよく理解してくださって、Uちゃんの普段の頑張りの表われであることに心動かされたようでした。

 

 

菅野幸恵先生(青山学院女子短期大学子ども学科教授)
幼稚園教諭・保育士を目指す学生に発達心理学を教えながら、子どもの育ちの場としての自主保育に関心を持ち、フィールドワークを重ねてきた。原宿おひさまの会には月に一度くらい参加。

 

 

次回の体験日は2020年3月16日(月)です。くわしくはこちら

 

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