山頭火の「行乞記」昭和7年ー1/15 | 安 明高 の 生 活

安 明高 の 生 活

日頃の気になること と
坂村真民・種田山頭火さんなどの作品を掲載してます

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弘法大師・法然上人・親鸞聖人などの魅力を紹介してます。

【南無大師遍照金剛】 * 7

一月廿四日

 小春、発動汽船であちこち行乞、宿は同前。

宇佐-25


早く起きる、

何となく楽しい日だ、

八時ポツポ船で名護屋へ渡る、

 

すぐ名護城趾へ登る、

よかつた。
遊覧地じみてゐないのがよい、

石垣ばかり枯草ばかり松ばかり、

外に何も残つてゐないのがよい、

 

たゞ見る丘陵の起伏だ、

そして一石一瓦こと/″\く太閤秀吉を思はせる、

さすがに規模は太閤らしい、

茶店――太閤茶屋――たゞ一軒の

老人がいろ/\と説明してくれる、

 

一ノ丸、二ノ丸、三ノ丸、大手搦手、等々々、

外濠は海、

内濠は埋つてゐる、

本丸の記念碑(それは自然石で東郷元帥の筆)がふさはしい、

天主台は十五間、

その上に立つて、玄海を見遙かして、

秀吉の心は波打つたゞらう、

その傍にシヤンがつゝましく控へてゐたかも知れない。


後方の山々には

日本諸国の諸大名が

それ/″\陣取つて日本魂を発露したゞらう。
私は玄海のかゞやきの中に豊太閤の姿を見た。


桑田変じて海となるといふが、

城趾が桑畑になつてゐる、松風、小鳥、枯薄。……
茶店の老人があまり深切に説明してくれるので、

とう/\絵葉書一組買はないではすまないやうになつた。


大きな松が枯れてゐる、桜が一本、藤が一株。
観月の場所としては随一だらう。


こゝでまた、いつもの癖で水を飲んだ。

 城あと、茨の実が赤い


・ゆつくり尿して城あと枯草

 

二時間ばかり漁村行乞、

ありがたいこともあり、

ありがたくないこともあつた。


十二時近くなつてまた発動機船で片島へ渡る、

一時間ほど行乞、

蘭竹の海岸づたひに田島神社へ参拝する、

 

こゝに松浦佐用姫の望夫石がある、

祠堂を作つて、

お初穂をあげなければ見せないと宮司がいふ、

 

それだけの余裕もないし、

またその石に回向して、

石が姫に立ちかへつても困るので

堂の前で心経読誦、そのまゝ渡し場へ急いだ、

こゝでも水を飲むことは忘れなかつた。


呼子へ渡されたのは二時、

あまり早かつたので、そして今日は出費が多かつたので

渡銭三回で三十銭、

外に久し振りにバツト七銭、

判をいたゞいてお賽銭五銭など

一時間行乞、

 

宿に帰つて、

また洗濯、また一杯、

宿のおかみさんが好意を持つてくれて

鰯の刺身一皿喜捨してくれた、

 

私も子供に一銭二銭三銭喜捨してやつた。
鰯といへば、

名護屋でも片島でもたくさんの収穫があつた、

女が七八人並んで網から外しては後へ投げる、

どこも鰯、鰯臭かつた。


呼子町の対岸には遊女屋が十余軒、

片島にも四五軒あつた、

しかし佐用姫の情熱を持つたやうな彼女は見当らなかつた!


石になるより銭になる、

石になれ、銭になれ、なりきれ。
名物松浦漬(鯨骨の粕漬)

そして佐用姫漬(福神漬)、

島へ小鳥を持つて帰る人、島の遊女を買ふ人。


蒲鉾はようござんすか、と少年がいつた、

いつぞや、お魚はいりませんか、

と女がいつたのと好一対の傑作だ。

 

・朝凪の島を二つおく(呼子港)
    □
・ほろりとぬけた歯ではある(再録)
    □
・黒髪の長さを潮風にまかし

 

この宿の娘については一つのロマンスがある、

おばあさんが、わざわざ、

二階の私に燠を持つてきてくれて話した。


同宿のテキヤさん、トギヤさん、

なか/\の話上手だ、

いろ/\話してゐるうちに、

猥談やら政治談やら、なか/\面白かつた、

殊にオツトセイのエロ話はおかしかつた。


自動車は、乗らないものには外道車、

火鉢に火がないならば灰鉢。……

 

(青空文庫作成ファイル)より

 

(続きます)

*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆  

 

今日も命を授けていただきありがとう (^-^)

二度とない人生

だから 今日が大事、今日が大切 

今日もいい日でありますように 【合掌】

 

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