山頭火の「行乞記」昭和5年ー11/16 | 安 明高 の 生 活

安 明高 の 生 活

日頃の気になること と
坂村真民・種田山頭火さんなどの作品を掲載してます

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弘法大師・法然上人・親鸞聖人などの魅力を紹介してます。

【南無大師遍照金剛】 * 7

 十一月十七日 晴、行程一里、宇ノ島、太田屋

       (三〇・中ノ上)
宇佐-25
朝酒は勿躰ないと思つたけれど、

見た以上は飲まずにはゐられない私である、

 

ほろ/\酔うてお暇する、

いつまたあはれるか、それはわからない、

けふこゝで顔と顔とを合せてる

人生はこれだけだ、これだけでよろしい、

これだけ以上になつては困る。……


情のこもつた別れの言葉をあとにして、すた/\歩く、

とても行乞なんか出来るものぢやない、

一里歩いて宇ノ島、教へられてゐた宿へ泊る、

何しろ淋しくてならないので濁酒を二三杯ひつかける、

そして休んだ、

かういふ場合には酔うて寝る外ないのだから。


此宿はよろしい、木賃宿は一般によくなつたが、

そして客種もよくなつたが、

三十銭でこれだけの待遇をうけると、

何となくすまないやうな気もする、

しかも木賃宿は、

それが客の多い宿ならば、みんな儲けだしてゐる。


友人からのたより――昧々居で受け取つたもの

をまた、くりかへしくりかへし読んだ、

そして人間、友、心といふものにうたれた。


同宿七人、同室はおへんろさんとおゑびすさん、

前者はおだやかな、しんせつな老人だつたが、

後者は無智な、我儘な中年者だつた、

でも話してゐるうちに、

私といふものを多少解つてくれたやうだつた。

 

・別れて来た道がまつすぐ
 酔うて急いで山国川を渡る
・つきあたつてまがれば風
・別れきてさみしい濁酒
があつた

 タダの湯へつかれた足を伸ばす


 十一月十八日 曇、宇ノ島八屋行乞、宿は同前、

        いゝ宿である。

行乞したくないけれど九時から三時まで行乞、

おいしい濁酒を飲んで、あたゝかい湯に入る、

そして寝る、

どうしても孤独の行乞者に戻りきれないので閉口々々。

 十一月十九日 晴、行程三里、門司、源三郎居、よすぎる。

嫌々行乞して椎田まで、もう我慢出来ないし、

門司までの汽車賃だけはあるので大里まで飛ぶ、

そこから広石町を尋ね歩いて、源三郎居の御厄介になる、

 

だいぶ探したが、

酒屋のおかみさんも、魚屋のおやぢさんも、

また若い巡査も

(彼は若いだけ巡査臭ぷん/\であつたが)

私と源三郎さんのやうな中流以上の知識階級乃至

サラリーマンとを結びつけえなかつたのはあたりまへだらう。


源三郎さんは――奥さんも父君も

好感を持たないではゐられないやうな人柄である、

たらふく酒を飲ませていたゞいて、

ぞんぶん河豚を食べさせていたゞいて、

そして絹夜具に寝せていたゞいた。

 

 けふのべんたうは野のまんなかで
 なつかしくもやはらかいフトンである
(源三郎居)
・蒲団ふうわりふる郷の夢( 〃 )

 

駐在所で源三郎居の所在を教へられて、

そこへの石段を上つてゆくと、

子を負つた若い奥さんが下つて来られる、

それが源三郎さんのマダムだつた、

これは句になりさうで、なか/\まとまらない、

犬の方はすぐ句になつたが!

(青空文庫作成ファイル)より

 

(続きます)

*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆  

 

今日も命を授けていただきありがとう (^-^)

二度とない人生

だから 今日が大事、今日が大切 

今日もいい日でありますように 【合掌】

 

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