トップアスリートの知られざる困難 当事者研究から考える、2020東京五輪 熱狂への警鐘
https://www.u-tokyo.ac.jp/focus/ja/articles/z0211_00019.html
トップアスリートの活躍の裏にあるのは、美談だけだろうか。
オリンピック・パラリンピック競技大会 − この日のためにすべてをかける憧れの舞台。
トップアスリートたちの熾烈な闘い。メディアに溢れる感動秘話。
世界中が奇跡の瞬間に胸を躍らせ、涙し、勇気をもらう。
華やかなスポーツの祭典の、もう一つの顔。それが、「能力主義が先鋭化する舞台」だ。
2018年7月30日、東京大学先端科学技術研究センター(東大先端研)でシンポジウム『日常への帰還 アスリートと宇宙飛行士の当事者研究』が開催された。
国家的ミッションや巨大な資本を背負いつつ、極限的な状況に身を置くことになったトップアスリートは、どのような困難を抱えるのか。
自らの経験を分かち合う「当事者研究」の視点で考察すると、今、私たちが向き合うべき課題が浮かび上がった。
『日常への帰還 アスリートと宇宙飛行士の当事者研究』
企画: 熊谷 晋一郎 准教授(東大先端研 当事者研究分野)
主催: 東京大学先端科学技術研究センター
後援: 公益財団法人日本オリンピック委員会
公益財団法人日本障がい者スポーツ協会日本パラリンピック委員会
登壇者:小磯 典子 氏(元バスケットボール オリンピック選手)
花岡 伸和 氏(元車椅子マラソン パラリンピック選手)
野口 聡一 氏(JAXA宇宙飛行士)
上岡 陽江 氏(依存症回復支援施設 ダルク女性ハウス代表)
記事より
「指導者は、自分がその子の人生の1ページを担っているのだと、肝に命じてほしい。この1試合、このワンシーズンだけという短期的な指導と、選手の一生を考えた指導では、その後がまったく違う。親も、勝つためだけの生活がどれだけ辛いか、理解する必要があります。がんばるだけではなく、楽しむという夢の追い方を教えるのは、大人の役目です」
オリンピック・パラリンピックは、世界トップレベルの競技が見られる。小磯さんは、「スポーツは、競い合うことで自分を磨くもの。相手がいて、相手が強いから、面白い。試合には必ず、勝者と敗者がいる。勝者への賞賛が社会に溢れ、敗者は影の世界に追いやられる。でも、試合後や引退後の人生の方が長いんです」と話す。