なぜか練馬(豊玉中)で蕎麦巡り (ふる井&法師人) | C.I.L.

なぜか練馬(豊玉中)で蕎麦巡り (ふる井&法師人)

オレ様はお蕎麦が大好きだ!

しかしオレが生まれる前から(というか100年以上前から) 地元にあった名店が店じまいしてしまい、それからというもの "お蕎麦欠乏症" にあえぐ毎日を過ごすハメに陥ってしまった。

そんな蕎麦難民のオレは、我慢の限界を迎えると突発的に長野まで蕎麦旅行に出かけたりして命を繋いでいたのだが、やはりもっと手近な場所に行きつけの店が欲しいなと。


というわけで、美味しいお蕎麦を求めておかあさん という名の内縁の妻と2人で仲良く昼間からふらつき回ることにしたんだが…


お前らアレだな。

時代の流れって残酷だよな。

本当は久しぶりに神保町の 「出雲蕎麦」 に行こうと思ったのね?あの割子で食べるヤツ。わんこそばとはまた違った食べ方のアレ。そしたらあれほどの老舗が閉店だってよ。何だよそれって感じじゃん?

でもまあ辞めちゃったもんは仕方ないから、練馬に 「名月庵 田中屋」 っていう北東京地区では知る人ぞ知る名店があるんで、そこに行こうと思ったの。板橋から名月庵までなら環七走ってすぐだし。そしたら田中屋も最近いきなり閉店しちゃったんだってよ。(銀座の支店が今は本店になってるみたい)

ほんとね、世界はそれほどまでにオレに蕎麦を食わせたくないのかと。





が、色々と調べてみたら、どうも田中屋があった場所から程近い位置に、美味しくて評判の良いお店があるという。お腹ぺこぺこで蕎麦成分を摂取したくて気が狂いそうだったので、簡単に住所だけ調べて豊玉中まで突撃してみた。




パーキングに車を停めて目的のお店まで歩いていると、また別のよさげな蕎麦屋を発見。ここはここで激しく気になり、オレ様ご自慢の "美味い店アンテナ" がビンビン反応してたんだけれども、とりあえず涙を飲んでスルー。




後ろ髪を引かれつつ歩いていると、今度はオレ様の "廃墟アンテナ" がビンビン。練馬ってオレの各種アンテナを刺激する物件がいろいろあるんだな。




で、そんな廃墟から程近い場所にある "法師人(ほうしと)" さんが今回の目的地……だったんだが、なんと営業時間中のはずなのに暖簾が出ておらず!

空腹と蕎麦欠乏症の発作で1秒でも早くズルズルしたかったオレ様は一気に火病をこじらせる。

思わず支度中の看板を見なかったことにして店に入ってやろうかと思ったんだが、ふと冷静に 「そういやここに来る前に気になる店あったよな?あそこはもう営業中だったよな?」 と、こういう時だけ脳味噌フル回転。




慌てて先ほど一度はスルーした "ふる井" さんというお店に突入。心の中で 「さっきはごめん!アレは違うんだ!オレは前からお前のことが!」 と、クソ安いドラマのような台詞を思い浮かべて自己弁護。

この "ふる井" さん、店内はご覧のように清潔で、最近巷に多い "コジャレ系の高級蕎麦屋" といった趣きである。




だがそこは練馬。都心のコジャレ系のお店だといいお値段しそうなメニューでも、そこそこの金額で抑えてあった。魅力的な文字が躍る季節メニューに心動かされそうになるのを必死で堪え、法師人のことも考えて "2色蕎麦" と "十割蕎麦" という無難でお腹に優しいメニューのみ注文。





こちらが2色蕎麦。今回はよもぎを練りこんだお蕎麦と、二八蕎麦の盛り合わせだった。このよもぎ蕎麦は、前に置かれただけで 「ふわぁ~ん」 と独特の香りが漂って来たくらい嗅覚を強く刺激される。試しにひとくち食べてみたら、よもぎの風味が強い強い。「こりゃイカン!後回しにしないと他の味を感じなくなる!」 と、慌てて二八の方から食べて行く。

で、二八蕎麦の方は気持ち固めに茹でてあって、しっかり〆てあるため江戸っ子好みの食感。ツルツルっと来てシコシコってな感じである。(ポキポキいうほど固いわけじゃない)





続いて十割蕎麦。もっとボソっとした田舎蕎麦的な食感かと思いきや、二八にも似たツルツルした喉越しで少し意外だった。明らかに季節が悪いんだろうけれども、蕎麦の風味はそれほど強くはなかったが、カツオの効いたつゆとの相性が良く、空腹だったこともあって無言でズルズル。こういうお店が近くに欲しいんだよなあという感じ。

何も産地で食べる 「山葵もお蕎麦も最高よん」 ってな物じゃなくて、こういうお手頃価格で普通に美味しいお蕎麦が食べたいだけなのに、なぜ板橋には蕎麦屋が少ないのだろうか?元宿場町ならまず蕎麦屋だろうに!





この店でオレが一番嬉しかったのはこの蕎麦湯。粘度が強くドロっとしてて、これを残ったつゆ+山葵+ネギと組み合わせたらそりゃアンタ。日本人として生まれたことに感謝したくなる幸福な一時ってな感じ。



■ふる井(蕎麦)
住所:東京都練馬区豊玉中2-6-5
TEL:03-3992-9480
営業時間:11:30~21:30
定休日:火曜日




半ばふる井で満足していたオレだったが、せっかくなので法師人さんの様子を伺いに来てみた。すると今度はちゃんと暖簾が出てて営業中。




迷わず突撃。蕎麦ならハシゴしても問題ない。きっと大丈夫。蕎麦目当てと言いながら東京の地ビールを頼んじゃったけどきっと大丈夫。

しかしこの "多摩の恵" ってビールは気品のある香りで飲みやすくて、だけどもしっかり味わいもあって実に美味い。デパートとかに置いてあるならぜひ買いに行きたい。




ビールをチビチビやっていると、すぐさまオクラの天ぷら(揚げだし?) を出してくれた。「え?頼んでないよ?」 と思ったら、お通しなんだって。

え?ここは昼からお通し出してもらえんの?!しかも凄く美味しいんですけれども!

いやぁ~ん、アタイをどうするつもりなのさ法師人!(いきなり評価うなぎ上り)




続いて出てきたぷりんぷりんの玉子焼きで、オレ様はまたしても 「いやぁ~ん♪」 と乙女モードに突入。あっさりお上品なお出汁と卵の風味が合わさってTHE日本の味。しかもここのは甘くない!実はオレ、甘い玉子焼きが苦手なんでこれは嬉しい!





そうこうしているとそばがきが登場。ふと 「オレら蕎麦が食べたいといって来たんだよな?しかも2軒目だよな?」 という疑問が頭をよぎったが、もはやそんなんどうでもいいわ。

で、ここはそばがきも滑らかでお上品ね。もっと無骨な田舎臭いそばがきも好きなんだけど、これはこれで食べやすくていいんじゃないかしら?

しかし心なしか腹にたまるな……。





和の、というか蕎麦屋ならではの肴で昼酒を楽しんでいると、ベストの頃合を見計らったかのようなタイミングでメインディッシュのお蕎麦が登場。この辺のさりげない気遣いをオレは見逃さない。ここは良い店だ。

ちなみに写真は粗挽きの "ほうしとせいろ"(650円くらい?) さん。値段がそこそこに抑えてあったので期待していなかったが、普通に満足できる量が出てきた。ああ、これまた嬉しい。

味の方はお蕎麦の風味をしっかり感じさせてくれ、茹で加減は先のふる井と比べるとちょっぴり柔めで水分が多目。お蕎麦って固けりゃいいってもんでもなく、柔めのお蕎麦にしかない瑞々しい美味さってのもあるんだよね。





こちらは粗挽きではなく、普通のせいろwithとろろ。下の写真を見ただけでわかる人もいるかもしれんが、このとろろがモッチリしてて重みがあって、食べてみると味も濃い。しかもこの店のつゆは醤油が勝ちすぎず、かといって出汁も勝ちすぎず、後味にほんのりお上品な甘味をってな感じでバランスが良いため、この頑丈なとろろとつゆだけで白いご飯を何膳か食えてしまいそう。

東京23区限定で考えたら、この店はかなり素晴らしいんじゃないかい?




器が独特な法師人さんの蕎麦湯。ふる井と比べると少しサラっとしているが、それでも充分に濃い。やはり蕎麦を食った後は蕎麦湯を飲まんとな!(そのためにネギと山葵は残しておかんとな!)



■法師人(蕎麦)
住所:東京都練馬区豊玉中2-7-12
TEL:03-3994-5486
営業時間:11:30~13:45 17:30~21:00
定休日:月、火、水曜日
URL:http://hoshito.jp/
※住宅街の中なので、手近なパーキングを見付けたらそこに入れちゃった方が安全。一応お店の脇に2台分の駐車スペースがあったけど、混雑店っぽいので期待しないほうがいい。




というわけで、"名月庵 田中屋" を失って傷心のオレだったが、知らない内にこんなに美味しい蕎麦屋が出来てたなんて…。

ふる井も法師人もそれぞれ特色があって良い店だし、特に両者とも飲兵衛にも見事に対応してくれてるってのが嬉しいね。

蕎麦屋ならではの気の利いた肴でクイっと酒を引っ掛けて、最後にズルズルっと美味しいお蕎麦を飲み込んで 「またくるよ!」 と家路につく。

そんなオヤジに私はなりたい。



ぶっちゃけこれほどまでに練馬区民が羨ましいと思ったことはない。

お前ら豊玉中の一角だけ板橋区に返せよ!

この泥棒猫!