『舞台』

西加奈子さんの小説。

主人公の葉太、29歳ではじめてのニューヨーク旅行。なんで来たの？っていうくらい、楽しそうじゃなくてウケる。それというのも葉太は、「ニューヨークに来たのにスタバに行くなんてダサい。ローカルな店でチョーまずいアメリカンブレックファストを食べたと、帰国して自慢しなければならない」にはじまる（笑）、よくわからん超どうでもいい自意識にいつも突き動かされているから。いつだって、そうやって生きてきたから。

そんな葉太がニューヨークに来た目的、それは愛読している作家の新刊『舞台』をセントラルパークで読むという、これは自意識からの解放？　しかしあと少しというところで、ある事件が起こり、結局自意識にフルボッコにされてしまうんである。で、そんとき葉太がどうしたか？

西さんの小説の主人公は、いつも何かがトゥーマッチ。だからまったく自分と関係ないと思って、アホや～ギャハハ～って笑いながら読んでいくと、ちょっと自分にも思い当たる節があって「シーン」ってなる。ああ！　自分もこの状態に置かれたらこうなるかも！！　みたいなことが必ず見つかって、人知れず身もだえたりしたのは秘密です（笑）。

そんで葉太が、すべてが終わって帰りの飛行機に乗るとき、たぶん葉太は、そんな自意識にからめとられてしまう自分を卒業しないんだろうな、と思わせるラストがよかった。ええねんええねん、自意識過剰でええねん、という。西さんの、この人間の哀しい性をそのままガバッと受け入れる感じ、好きだな～。