大人の恋模様を、粋で洒脱な会話と舞台装置でぐいぐい読ませる、森瑤子さんの長編小説(1985年)。


なのだが、この作品はどうしたことか。恋のはじまりもおわりもスパンと切り落とし、そのあいだの煩悶や倦怠や孤独だけがこれでもかこれでもかと描かれる。


主人公の麻子は、伊丹と恋仲であるが、お互い結婚してるのでW不倫ということになる。どこでどうやって出会ったのかは書かずに、いきなり伊丹が南の島にひとりで逃避行!麻子も伊丹を追いかけるが、再会した空港ではハグもキスもできず、予想を裏切ってふたりともただ自分たちの状況に困惑してしまう。どこにも続かない、小さな未開発の南の島での生活。始まる前から終わってる関係、生まれたときから死んでる恋…。


しかしこのバブル世代の描く孤独のありようは、今とはずいぶん違う感じがする。おなかもいっぱい、財布もいっぱい、だけどこんなはずではなかった…という孤独?満月をすぎたらあとは欠けてゆくだけ…みたいな、えらい高いところで孤独感じてますなぁ(笑)、っていう。


「男というものは自分の意志をもち、それをつらぬき、さっさと行動に移すような女をもてあますものなのだ。相手の重荷になるまい、迷惑をかけまいとする女の方が、ずっしりの男の荷物になる女より、男の心の負担になるのだ。なぜだかわからないが。」


いいじゃん、そんな女、かっこいいじゃないですか!そんな女がモテろよ!

 

 

●森瑤子さんの本(隠居の本棚より)



・・・・・・・・・・・・・・

●メルマガはじめました!

 

主に新刊の連載と、購読者さんからのおたよりにお返事するコーナーなどあり〼。

 

ご購読はこちらからできます! 初月は無料なので、登録・解除はお気軽に~。

↓↓↓

大原扁理のやる気のないラジオ メルマガ版 (mag2.com)


メルマガタイトル:大原扁理のやる気のないラジオ メルマガ版
対応機器 :PC・携帯向け
表示形式 :テキスト・HTML形式
発行周期 :毎月 第2金曜日・第4金曜日
創刊日 :2021/4/9
登録料金 :550円/月(税込)