デビュー作で太宰治賞と三島由紀夫賞をW受賞し、文学界のちょっとしたニュースになった、今村夏子さん。


主人公は、ちょっと変な女の子・あみ子。なぜかいつも周りの人を戸惑わせ、泣かせ、怒らせてしまう。あみ子はなぜなのか、まったく意味がわかっていない。幸か不幸か、周りがやさしい人たちなもんだから、あみ子を受けとめようとしてある人は病み、ある人はグレ、そうしてある人は、ついにあみ子をぶん殴る。


あみ子を待ち受ける世界は残酷。あみ子はおばあちゃんの家に預けられることになる。そこで、いつもなぜか竹馬に乗っている近所の女の子と友だちになる。あれはたぶん、誰にもわかってもらえないという自分と似た孤独を抱えた人間にはじめて出会って、あみ子が想像力と思いやりをもって他人と関わっていく術を獲得したのだと思いたい。希望のあるラストなのだと思いたい。とかいって、こんな女が目の前にいたら、私もぶん殴ってるけど(笑)。


この単行本を発表したあと、「もう書く予定はない」というようなことを言って、長い沈黙が続いていた今村さん。また書き始めてくれて、本当に嬉しいです。


 

 

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●今村夏子さんの本(隠居の本棚より)


・『あひる


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