2/28(月)②

財布がないので、一瞬、「うわー死んだ」と思った。が、よく考えたらSuicaがポケットに入っていた。とりあえずそれで支払い、友人宅までは行ける。OK。

何はともあれ遺失届だ。この病み上がりの老体で重いスーツケースを引きずりながら、バスセンターと交番に遺失届を出しにいくのは、なかなかの肉体的試練であった。でも東京駅内にふたつともあるから、えいやっと済ませる。

でも肉体的試練より精神的試練かもしれない。こういうときに対応が冷たいと、必要以上に心折れますよね。遺失してる時点でもうじゅうぶん心折れてんのに、帰国したばかりでスマホの通話も使えず財布もなくして小銭もなく、交番で電話だけでも貸してもらえませんかっていうのもマニュアル通りに断られて、ひえ~お金を持ってない人には超冷たいよこの街、と改めて思ったことでした。

旅と移住とに関わらず、東京に来た人が一番はじめに心が折れるのはこういうところな気がする。マニュアルというシミひとつないつるつるの壁、一見キレイで快適そう、でもひとたびふつうじゃない状態になった人が、つかまるところが一個もなくて、クッションもない床に顔から思いっきし倒れるしかない、その汚れた床もマニュアル通りにきれいにされて、何事もなかったかのように忘れられる。折れた心を灰にして生きていくしかないのか、、、と呆然とした、上京したばかりの心持ちを思い出したなぁ。

しかし私はここに六年住んだから知っている、その壁のむこうには、その気になれば意外とあったかい人も多くて、マニュアルの壁と戦ってる人もたくさんいることを。マニュアルがどうやっても殺せない人間味があることを。そしてそのマニュアルの壁にたまに落書きとかして、当たり前を揺さぶって反応をみてみるというオツな楽しみがあることも。それに気がつかなかったら、私、すぐ田舎に帰ってました。

でもでも遺失届を出すときは、やっぱり心を灰にするのがオススメです☆

~つづく~

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●拙著でてます