フランス人作家ジャン・ジオノの短編。

1910年代、プロヴァンスのうちすてられた村にひとりで住み、社会から切り離されたような生活を送る羊飼いのおっさんエルゼアール・ブフィエ。毎日こつこつどんぐりを植える彼に偶然であった主人公は、それ以来、たびたび彼を訪ねていく。

に、似ている、このおっさんのひとりハッピー感。はじめは樫からはじめて、ここは樫だけど、あの谷間なら地表間近に水分があるだろうから、樺を植えてみよっかな~とかいう、ひとり探究心。

傑作なのはこのおっさん、世間を無視して、ひとりで地道に、うまずたゆまずやってたら、「第一次大戦同様、第二次大戦もこの人にはなんの影響も及ぼさなかった」だって(笑)

そして三十年あまりが経った頃、村には森や沢や人が戻り、うつくしい風景が広がっていましたとさ。

主人公からは、その行為がなにか高貴なものに映るんだけど、私はこのおっさんが、べつに崇高な目的のためではなく、ただたのしくてやってたようにしか見えないんですよね。

たぶんそこんとこに、人生のひみつってやつがあるんじゃないかと私はにらんでいる。


木を植えた人木を植えた人
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