昔、私が住んでいた町で、中学二年生の大河内清輝くんが自殺した。

私はそのとき小学四年生で、自殺というのがどういうことなのか、さっぱりわかってなかったんだけど、のちに自分がけっこうえげつないいじめにあったとき、死にたくて自殺するというよりも、最後まで人間らしく生きるために自殺するってことがあるかもしれない、と思った。

未成年の自殺のニュースがあるたびに、ほんとは誰よりも生きようとしてたのかもしれない彼らの選択を、きっと事前に知っていても、私はだから止められないだろうなと思う。そっかー、決めたんだね、と言ってあげるくらいのことしか。

この本を読んだときに、自殺の内側から語りかける大人にはじめて出会った、と思った。自殺について語る大人で、10代の私が耳を貸したのは、後にも先にも柳美里さんひとりだけ。今でも折に触れては読み返す、大切な一冊です。