木村紅美さんの短編。『黒うさぎたちのソウル』に併禄されてます。

表題作とあわせて、沖縄に深く関係のある人がたくさん出てくるんだけど、私は表題作じゃない方の、『ボリビアのオキナワ生まれ』が好きでした。

主人公の男性が、(たぶん)かなりデブで、村上春樹さんの小説に出てくるような感じじゃなくて、たいへん好感が持てる。

昔つきあっていた沖縄出身の彼女・有沙と、その親戚マナさんとの思い出を回想していく話。

マナさんの家族は、戦後、アメリカ軍の基地のために土地を取り上げられ、しかたなく南米ボリビアへ移住。

ボリビアには沖縄人移民地区「オキナワ」という場所が本当にあって、小さなコミュニティ内では今も実際に日本語が話されているという。

マナさんはそこで生まれ、ボリビアの政情悪化にともなって日本へ帰国。しかし、沖縄ではなく、神奈川県の鶴見という沖縄人居住区へ。そこで父と二人、沖縄ボリビア居酒屋を経営していた。

沖縄生まれの有沙の、まっすぐな沖縄への想いと、ボリビアのオキナワ生まれのマナさんの、少し遠慮がちな沖縄への想いのコントラストがやるせない。

主人公とマナさんが、海の家で行われる沖縄民謡のライブに行くシーンがある。「移民小唄」を歌ってくれると良いな、とつぶやくマナさん。しかし、リクエストタイムになっても、沖縄生まれのうちなーんちゅに気後れして、「移民小唄」をリクエストできないまま。

沖縄に暮らしたことのないうちなーんちゅのマナさんにとって、沖縄とは何だったろうか。