人は死期が近づくと、神の視点を獲得するんでしょうか。
病床の著者が、ごく身近なありふれたもの(虫とか)を見るだに命の不思議に思いを馳せていく。
尾崎一雄は志賀直哉に師事してたっていうんで、作風が似てるような気もしますけど、この小説の主人公は家族と同居してて、それがなんかサザエさんみたいなからっとしたユーモアのある人たちで、ずいぶん笑えてよかった。
たとえば、娘にマッサージしてもらうんだけど、この娘が片手で肩をもみながら、父の体を机代わりにして読書したりとか。
そして最後の家族と虫とのやりとりがおかしい(笑)。
死を目前に、このまま悟りの境地にいくのかと思ったら、やっぱり所詮人間なんですよね。