なんとも奇妙な小説だった。けど、どこか懐かしいような気がした。
子供のころの意識の流れってこんな感じじゃないですか?ただ脈絡のない意識の奔流が、現実に起こっていることに並行してただひたすら流れていく感じ、というのかな。
人に聞かせられる状態になるまで磨く前の、粗野でごろごろしたことばにつまずきながら読むのがまた楽しかった。
それでこどもって、たまにすばらしく聞き捨てならない、カンの冴えたこというんですよね。フルートの演奏を、「怖い音色が、もっと怖くなるはずでしたが、中に、安らぎが入ってしまった感じがします」とか。
人は大人になっていく過程で文章にも社会性を身につけてしまって、自分だけが楽しい言葉をしゃべるだけじゃ生きられなくなっちゃうもんだと思うのですが、自分だけが楽しいことをしゃべるだけでよかったあの頃をたしかに過ごしたことを私は覚えている、というのが、この懐かしさの正体なのかも。



・・・・・・・・・・・・・・・・・


●隠居生活の本出てます