封印 | おはなしてーこのお話

おはなしてーこのお話

ふっと生まれたお話や感じたことを書いてます。

幾重にも紐が結ばれて

その紐ごとに封印という文字の書かれた紙が貼られている

飾り細工のしてある分厚い板の箱があった。


ずいぶん前から

その封印をひとつずつはがしている人がいた。


その封印にはひとつずつ魔術がかけられていた。

その魔術ごとに解く術を

たくさんの資料や本を片手に

ひとつずつ試しては、封印を外していた。


その人の周りは、

いろんな資料や本道具でいっぱいだった。


ある日、その人は、

そのたくさんの封印の札をみて

もう嫌になってきてしまって

手を止め、両手を広げて仰向けに寝転がった。


少し、ウトウトしてしまったみたいだった。

目が覚めて、1冊の魔術の本のタイトルが目に入った。


もしかして、

一度に全部の封印を解く術があるかも

そんな考えが浮かんだとき


その方法を知っているような気がした。


そして、それを思い出すために

何冊も本を開いてみた。


そんな時

「ふっ・・・・・・・。

 ふふふふふっ。

 わはははは。」と笑い声が聞こえた。


びっくりして

本を開く手を止めて

その笑い声の方向を見た。


腰に布を巻いた頑強な体の男性がたっていた。


「すまない。どうしても堪えられなかった」と

また、笑いながら答えた。


その男性に

「何がおかしんですか?

 あなたは誰ですか?」と

ちょっと腹立だしい気持ちで立て続けに聞いた。


「ほんとすまない。

 俺は、この洞窟に番人だ」と応えた。


「そうですか・・・。

 ・・・で、何がおかしんですか?」

ちょっと強気口調で言った。


「いや・・・。

 長い間、君のやっていること見せてもらっていたけど

 君には、この箱の封印がどんなに見えているかわかったから

 思わず笑ってしまったんだよ。」


その言葉の意味がわからなくて

「どんなふうに見えているか?って

 どういういみですか!?」


その言葉に、やっぱりという感じで

また、少し笑いながら

「だから・・・。

 君には、その封印はたくさんに見えているんだなぁって思ってね。」


その返事に何を言っているのかわからなくて

「・・・どう言う意味ですか?」


「言っていいのかなぁ。

 これ以上いうと、君、怒るかもしれないなぁ」


「いいから言ってください!!」


・・・少しの間考えて、その男性は

「だからね。

 君には、たくさんの封印に見えてるみたいだけど

 その封印は、ひとつしかないよ。

 ひとつの封印を取ると

 また、次の封印が現れる。

 ずっと、その繰り返しだった。

 ・・・けど、君はなにか数えては、ため息をついてるし

 その意味がわからなかったけど

 やっとわかったら、おかしくなってしまってね。」

そう言い終えると微笑んだ目で見ていた。


必死で封印を解いていた人は

「・・・?」何を言っているのわからなかった。


男性は、黙って箱の方に目をやった。

その目に即されて、同じにその箱を見た。


封印はひとつだった。


箱の前に近づいて、いつものように封印を解いた

そうするとあっと今に、また封印が出来た。


びっくりするしかなかった。

今まで、ずっとこうしていたのかと思った。


少し、気が楽になった気がしたが

もしかして、もう終わらないのかもしれない

そんなことを思ってしまった。


そんな姿を見ていた男性が

そんな気持ちに気がついて


「その封印は、君がかけたものだよ。

 そんなふうに現れるようにしたのもね。

 君が生まれる前の君がね。

 しかし、その箱に時間をかけることに

 何の意味があるのかね。」


その言葉を聞いたとき

なんとなく、否定できなかった。

そんな気が自分でもしていた。


そのことに気がつけば

もう箱を開ける意味がなくなる。

そう思っていたことにがつくと


箱の前で、佇むしかなかった。


そんな姿のその肩にぽんと手を触れて

「まぁ、どうするかは君次第だよ」と

男性一言いうと気配をなくした。