ひとりにしないで | おはなしてーこのお話

おはなしてーこのお話

ふっと生まれたお話や感じたことを書いてます。

「ひとりにしないで・・・」そう言って

袖の裾を小さく引っ張られる。


それに気がつき振り向くと


小さな女の子が

目にいっぱい涙を貯めて

袖の裾を少しだけつまむように持っていた。


申し訳なさそうに

そして、やっとの思いで

そうしたように、体が小さく震えていた。


「ひとりにしないで・・・」


また、小さな声でやっとの思いで言っている。


裾を持たれた人は

「大丈夫だよ」と微笑んだ


「ウソっ・・・」小さな声で女の子は言う


「そんなことないよ。いつも一緒だよ」とまた答えると


「何度もそう言った・・・」と女の子は言う


そして、涙声ではあるけど

悲しくて、あきらめのような言葉で


「いつも一緒だと思っていたの。

 一緒に頑張って、

 一緒にやっていくんだって思ってたの・・・

 私は、それが嬉しくて

 私なりに頑張ったんだよ。

 面倒かけちゃダメだと思ってた

 

 私は小さいから何もできないかもしれないけど

 あなたと一緒にできるの楽しくて嬉しくて

 頑張った・・・嬉しかったの。楽しかったの・・・

 

 でもね。一所懸命頑張ってたら

 あなたの顔見ると

 あなたはほかの人ばかりに気を使ってた。

 ほかの人ばかりに心をくだいていた。

 ほかの人ばっかりを見てた。


 悲しかったよ。

 それでもね。好きだったんだ。

 時折、思い立ったように

 ごめんね、ありがとう。っていってくれる

 そんな気持ちを信じたんだよ。


 でも、今は、信じたいけど

 今は、わからなくなちゃったの・・・

 だから、ここに来たの

 でも、・・・」 

 

そう言って女の子は手を離した。


その言葉を聞いて、

ドキッとしたその人は

女の子のその手を取ろうとした。


その人の手から逃れるように

女の子は、手を後ろに隠した。


そして、

「一人にしないで・・・」

そう言って、涙の流れる顔で

足を一歩、後ろに出そうとしていた。