あともう少し | おはなしてーこのお話

おはなしてーこのお話

ふっと生まれたお話や感じたことを書いてます。

「おーい。そろそろ戻っておいでよー」


大きな雲のようなものの世界に住んでいる子が

上をむいて叫んでいる。


その雲のようなものの上には

あみだくじのように広がり伸びた

鉄筋のような橋が道のように広がっている。


その声を聞いて、その上の向こうから走ってきた子は

息を弾ませながら、声をかけた子に

「もう少しやる・・・まってて」と言って

また、いたところに戻ろうとして


「その雲の世界があること

 君がそこに居てくれること忘れたらいけないから

 もう少し、その雲をこの橋に近づけて上にあげておいて

 いつでも戻れるようにね。」といって

また、走り出す。


橋を作っている子は、雲の両側にある岸を

その鉄筋をつなぎ合わせて結んでいる。


どこからでもどこへでもいけるようにと

あみだくじのように広げて行った。


そのようすをずっと雲に住んでいる子は見ていた。


橋を作っている子が、ここまで来るまで

どれだけ大変だったかも

悲しいこと辛いことがたくさんあったことも知っている。


怒ったり、泣いたり、投げ出しそうになりながら

ここまでやって来たことを知っている。


そのたびに、戻ってくればいいのにと思っていた。


でも、何度呼んでも、その声に応えてもらえなかった。


それが、この頃、こうして返事が返ってくる。

少しずつ雲が橋に近づいて

上がっていくように膨らんでいくようになってから

声が届くようになった。


それでも声が届くようになった最初の頃は、

返事はあるけど話にならない。

聞く耳を持たない。反発や怒りばかりの返事だった。


それが今、こうして心が通うように話ができるようになった。


そのたびに、橋は鉛の色から

オレンジのような黄色い光を帯びるようになっていった。


橋を作っている子は、もう少しだから

もう少しであの先に届く

最後のところをつないでしまえば

この橋からいろんなものが通うようになる。

そうしたら、雲の世界からその様子を見てるだけでいいんだ。


そう思いながら、どんどんと橋を広げていく

前は、もっと早くあの雲の世界に行きたいと思っていた。

しんどくて、悲しくて、いつも一人で辛かった。

いつもいつも、心は不安と不平ばっかりだった。

いつもこんなこと辞めたいと思っていた。


今も、そんな気持ちは少しある。

うまくいかないこともあるし、泣きたくなることもある。


でも、、

今は自分がやりたくてやってるんだって思えるようになった。

だから、もう少しだけ頑張ってみたいと思った。

そう思えたから、頑張れる。


雲の世界で本当の友達が待っていてくれる。

雲の世界があることが分かっているから

信じていられるから、頑張れてる。


あともう少し!!