靴屋 | おはなしてーこのお話

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ふっと生まれたお話や感じたことを書いてます。

小さな町の片隅に小さな靴屋があった。

そこで、中年にさしかかろうかという男性が

毎日、店の前を通り道にしている労働者の靴の修理をしていた。

大きくない店の中で毎日

労働者の持ってくる靴を修理していた。


少しくたびれたその靴屋の男性は

毎日、毎日同じ繰り返しの日々を送っていた。


ただ、日曜日だけは仕事を休み教会に行き

礼拝を済ましたあとは、近くの川で釣りをした。


じっと釣り糸を見つめ静かな時間を過ごすこと

それが彼の楽しみだった。


お酒を飲むよりは、あったかいコーヒーが好きで

タバコより、近所の人が時折焼いてきてくれるクッキーが

彼の心を穏やかにさせた。


周りの人から見ると

何も楽しみのない気にも止まらない

そんな彼だった。


けれど、彼にはひとつの思いがあった。


人に対し誠実であろう。という想い。

それが彼の退屈に見える毎日を支えていた。


彼が、神に祈ることは、そのひとつだけだった。

人に誠実であれますように・・・

それが、彼の願いだった。


そんな彼に、「たまには、お客に合わせておしゃべりぐらいしたら・・・」

そんな皮肉を言うお客もいる。


そんなこと言うお客でも

彼のところに必ず修理に靴を持ってくる。


昔の彼は、今から想像もできないほど

明るくおしゃべりだった。

たくさんの恋もした。


彼の明るく話し上手なところに惹かれて

彼の恋人になる女性がほとんどだった。


そんな中、ただ一人

彼の弱さを愛してくれる女性がいた。

彼のおしゃべりは、相手を思う気持ちと

嫌われたくないという気持ちのおしゃべりだった。


そのおしゃべりは、ときおり事実より大きく言ったり

相手を喜ばせるために嘘をi言ったりする。


弱さの入った優しを愛してくれた女性がいた。


その女性のそばにいると彼は素直になれた

でも、それを表現できなかった。

怖かったからだ。


だから、いつものようにおしゃべリになった。

弱い自分が彼女の前に現れ嫌われると思ったからだ。


そんな彼に彼女は

「そんなにお話しなくていいわよ」と微笑んだ。

そんな彼女に素直になりたかった。

でも、そんなふうに微笑み彼女に嫌われることが

余計に怖くなった。


そして、ある日

彼女は、「どうして、あなた本当の姿を見せてくれないの」

そう言って、彼女は目に涙をいっぱい貯めていた。

彼女の真剣な眼差しが、彼を慌てさせた。


そして、彼は、また、いつものようなおしゃべりをしてしまった。

彼女は、とても落胆した顔をみせ黙って彼の前から離れていった。


彼は、どうしたらいいか分からず

心の中は、慌ててしまって何もできないままだった。


それから、彼は、どれだけ大切なものを失ったかがわかった。


そして、彼女のもとをなんども訪れたが

彼女は2度とあってはくれなかった。


かれは、そうして、何度も何度も彼女のあいにくことで

彼女がどれだけ傷つき、悲しみを感じ

自分を愛していてくれたことを知った。


もっと、誠実に彼女と向き合えばよかった。

彼女の目を見、彼女の声を聞き

彼女の思いを感じていれば・・・


彼は、ひどく公開した。


そして、彼は、人に誠実であろうと誓った。


人に何を言われても

自分に自身に誇りとなるように