優しき教え | おはなしてーこのお話

おはなしてーこのお話

ふっと生まれたお話や感じたことを書いてます。

「あなたが望んだことだから…」

どこからともなく優しく柔らかく

心にしみるように、その声はしてきた。


「あなたが、今、観ているもの

 それが、慈悲の心の根底にあるもの

 そこを観つめなければ、解からないもの

 誰もが持っている醜く恐ろしい心

 

 あなた方が、遠い存在だという

 ブッタやキリストも同じに持っている心


 憎しみやねたみや虚栄心

 あなたが嘔吐をし、苦しみ身もだえするほどの

 悪しき思い。見るに堪えないどろどろと闇の心

 その想いをしっかりと観るのです。

 そこに踏みとどまり、しっかりと観るのです。

  

 そして、その想いを感じるのです。

 そうすれば、どろどろと感じていたものが

 その重みをなくし、透き通ってくるのが解かるでしょう。


 そして、あなたは、その感覚と自らを共にするでしょう。

 そしてそこに現れる。哀しみや孤独、不安を

 自らのことのように感じるでしょう・・・」


少しして、またその声は続けた


「そう、慈悲は心の闇から生まれる。

 その闇を知り、そこにある哀しい物語を知り

 我がことのように寄り添うことが出来たとき

 慈悲というものが理解できるのです。


 慈悲は、何かを施すことでも

 何かを与えることでもないのです。

 心を開きそこにあり続けること

 そして、その心に入る者を

 静かに招き入れ、立ち去るまで

 そっと見守ることなのですよ。

 

 ・・・・だから、あなたの望むものを私は用意したのです。

 今ある苦しみも今まで体験した憎しみもねたみも

 すべて、そのためにあったのです。

 哀しいかな、その体験をしなければ

 本当に心からの理解と慈悲を行うことはできません。


 あなたたちの善行と呼ぶものの中に

 真の慈悲はほとんどないでしょう。

 あなたたちが決めた良き行い

 それを誉れ高きことと思っている以上は

 そこには慈悲の心はありません。」


それだけを言い、その声は去っていった。


その声を聞いた若者は、

ふーっと大きく息を吐き

その言葉の優しさが、体の隅々に広がるのを感じていた。