燃える炎の中で | おはなしてーこのお話

おはなしてーこのお話

ふっと生まれたお話や感じたことを書いてます。

ただ、愛していただけ

愛されていると思っていただけ


その想いが、あなたを束縛し

あなたを身動きできなものしていたなんて


「おまえの存在自体が重いんだよ」


そう言われて、あなたの顔見ると

あなたは、うっすらと笑みを浮かべていた。


その顔から、私のことを憎むまでになっていたことが分かった。


あなたのために何でもしてあげたかった。

そうしてあげることが、私の喜びだった。

それをさせてくれて、受け止めてくれることが、

愛されていることを実感できることだった。


そんな想いが、あなたを苦しめていた。


身が固まり粉々になったように感じた。

何も言えなかった。


落胆と悲しみと絶望と…

そんな、言葉で表すことのできない感情が

体の中に渦巻いていた。


そして、あなたのそばに寄り添う人を見たとき


私の中で、何かの火がついた。

そして、そんな二人を目にする度に

その火は、大きくなっていった。


そして、ある時

二人が仲良く食事をしているところに出くわす。

一瞬、そこから立ち去ろうかと思った。

けれど、そうすることが出来ないまま

案内されるテーブルに着いた。


気にしないようにすればするほど

二人の声や楽しそうにしてる雰囲気が伝わってくる気がした。


食事を終え、帰ろうとしたとき

あなたのそばで笑うその人が、私に気づいた。

そして、その笑顔のまま、私と目を合わせたとき

さげすまれているような気がした。


そして、その人の視線に気がついたあなたが私を見る。

その人に向けられて微笑んでいた顔が

怒ったような嫌な顔に変わり

すぐに顔をそむけ、何もなかったように

そばにいるその人に笑みを向けた。


そんなあなたを見たとき

私は、あなたにとってもいない存在なってしまったんだと思った。


そう思った時、悲しみとあきらめが

私の中の火を大きくした。


そんな出来事の後

家までの道をただ、ただ、歩いていた。

家に帰っても、ずっとそのことに心をとらわれていた。


そして、夜が深く静まった時

私の中の火が、ゴォッという大きな音と共に

一気に大きな炎になった。

その炎の勢いが、私を突き動かすように

二人の住む家に向かわせた。


そして、私は、二人の住む家に火を付けた。

そして、そこを立ち去ろうともせず

その火が大きくなるのを見つめていた。


私は、その時、何も感じていなかった。

心が氷のようになり、体の力も何もかも抜けていたように

そこにたたずんでいた。


そして、私はたくさんの人の中傷と憶測の中

責められ、罰せられた。



そうして、私は生まれ変わった。


今度こそ、愛することを受け入れてくれること

愛されることを求めて


そして、私は、また、同じ過ちを犯した。

今度は、自らの手で愛していた人を傷つけた。

そして、その姿を見て驚き、その場から逃げた。

自分の中の炎から逃げようとしていた。

岸壁に向かって一目散にかけながら

どうしてこうなるのかと涙を流し、

心の中で大きな叫びをあげながら、一気に身を投げた。



そうして、私は、また、生まれ変わる。


そして、また、同じように過ちを繰り返した。

その相手は、親であることもあった。

自分自身の子供であったこともあった。


何度も繰り返し続けた。


その繰り返しの中で

同時に私も自分のしたことで

心に大きな傷を負うようになっていった。


その傷に気づくようになって

私の中の炎は、小さくなっていった。


そして、いつしか炎を感じることがなくなった。


ただ、いつしか、愛していることを感じなくした。

その想いを隠した。


愛は、ひとを傷つけるものなのだと思った。

私には、与えられない特別なものなのだと思うようになっていた。


人と深くかかわることをやめた。

そうすると、愛さずにいられなくなるから…


そして、ありのままの自分を出すことをやめた。

愛することも愛されることもやめた。

それは、ありのままの自分を表現し、受け入れてもらうことだから


そして、そうすることで

私は、人を傷つけるほどの炎を起こしてしまうから

その炎がまた、燃え盛らないようにと


そうやって、生きてきて

あるとき、あの時の炎を思い出し

それをじっと見つめていたとき


ふっと思った。


ただ、愛している想いを伝えるだけでよかったのかもしれないと

何かをしてあげることも何もなかったかもしれないと


あなたを愛しているよと言い

あなたの目をまっすぐに見つめ笑い

信じていればよかったかもしれないと思った。


そう思いながら

そうするには、あまりに私の中の愛を

信じられなくさせてしまっていた私がいた。