~ちゃーちゃん旅に出る~ | おはなしてーこのお話

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ふっと生まれたお話や感じたことを書いてます。

大人たちが道端で世間話をしていました。

その横を三輪車を必死にこいで通り過ぎる小さな男の子
背中には大きなブリキの車をひもで結んでつけています。

大人たちは、その男の子に気がついて
話をやめて、その子に声をかけます。
「ちゃーちゃん、どこに行くんだい?」

その男の子は、三輪車を必死で漕ぎながら
「行けるとこまで行くの~」

少し大きな声で大人たちが
また、声をかけます。
「何しに行くのぉ?」

その男の子も少しだけ声を大きくして答えました。
「広くてきれいなところを見に行くのっ」

そう答えながら、
男の子は三輪車をこぐ足を止めません。

ちゃーちゃんは、いつもは下を向いて遊んでいるばかりいました。
ある時、その手を止めて顔をあげて遠くを見ました。
その先に広くてとてもきれいな場所、
そんな場所が自分の見ている先にある気がして
そばに置いてあった三輪車に飛び乗りました。

ブリキの車を紐でたすき掛けにして背負って
ちゃーちゃんはその場所が絶対ある
そんな気がして、無我夢中で出発しました。

大人たちから見るとちゃーちゃんの三輪車は
とても速いとはいえません。
誰もが、もっと早く行けるものに乗ればいいのにと思います。

でも、背中に乗せてるブリキの車と遊ぶことしかしなくて
ずーっと下を向いて遊んで、声をかけてもほとんど返事がしないで
ずーっと同じ場所にい続けたちゃーちゃん。

そんなちゃーちゃんが
こうして、一所懸命に三輪車をこぎ
歩きだしたことがうれしくて

きっと、どこかで大きな自転車に乗れるようになるだろうって
ちゃーちゃんが目指す場所にきっとたどりつけると信じて
今度、会うときはきっと笑顔いっぱいのちゃーちゃんに会えると信じて
ちゃーちゃんの後姿を見送っていました。


ちゃーちゃんという男の子