~彼女自身~ | おはなしてーこのお話

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ふっと生まれたお話や感じたことを書いてます。

彼女は寂しかった。

ずっと ずーっと寂しかった。

どこにいても、何をしていても・・・


そんな寂しさを感じないために

何かをしなくてはと思い、いろんなことをした。

何もしないではいられなかった。


何もしない自分は、

誰にも認められないと

みんなに受け入れてもらえないんだと思って・・・


「頼りになるから…」

「しっかりしているから…」

彼女に対してのそんな言葉を聞くようになる。


彼女はうれしかった。

その言葉は、彼女を必要としてもらっているということ

認められたんだと思った。


彼女はもっと頑張ろうと思った。

そうでないといけないと思った。

それでいいんだと思っていた。


そんな風に思って

そんな風にやって


いつしか彼女は、

もうそんな言葉はいらないと思うようになっていった。


しっかりしていなくても頼りにされなくても

受け入れられる人がいる。

認められる人がいる。

そんな人に気がつくようになっていったから


それでもしっかりやろうとする彼女。


でも、彼女は、そんな人たちを目にするたびに

余計にしっかりしなくてはと思うようになっていった。


彼女は、そんな人たちがうらやましかった。

でも、自分には何もないからと思った。

そんな想いが、彼女を支えていた。


そんな悲しみやさびしさを感じないために

仕方ないという言葉で納得させながら

今までと変わらずにやった。


そんな彼女は、

いつしか、利用されているんじゃないかと

ときおり思うようになった。


頼りになるから、しっかりしているから

ただ、それだけなんじゃないかと思った。


そんな想いが浮かぶたびに

何度も何度も打ち消した。


いつしか、大切に思う人や大好きな人までにも

そんなことを思ってしまうことを

彼女は、責めた。


一瞬でもそんな風に思う

そんな自分を嫌になっていった。


そして、ただ一人でいい

世界でたった一人でいいから

どんなことがあっても味方になってくれる人がほしいと思うようになった。


そうすれば、何でも頑張れる。

安心して、生きていけると思うようになっていた。


でも、彼女の前には

そんな人は現れなかった。


そんな彼女が、倒れる。

倒れたまま、大きな声で泣いた。

今までの怒りや悲しみ、ねたみや嫉妬の気持ちを吐き続けた。


そして、何もかもを吐き出したとき

彼女は自分自身を両手で抱き締めていた。


そんな自分の体を感じながら

自分自身がそうなんじゃないかと思った。


ずーっと離れずに

どんなにつらく当たっても黒い気持を抱いても

ずっと離れずにい続けてくれる。

それは、自分自身なんじゃないかと


もうだれにも認められることは必要はないんじゃないかと思った。

想いを伝えることに必死になる必要もなんじゃないかと思った。


自分が自分の想いを知ってさえすればいい。

自分自身を認めて…


まだ、少しだけ心がさみしがる


それでも彼女は立ちあがろうとする

汚れた服のまま

よろけながらも立ち上がり

体を起こし、前を向くことができていた。