静かな村のはずれに独り住む女性がいた。
彼女は熱心に薬草を摘んできては、たくさんの薬を作っていた。
人のために一所懸命に作っていた。
ある時、街に買い物にいたときに
立ち話をしていた夫人が、せきが出て仕方ない母親の話していた。
そんな話が、聞こえてきたとき。
口数の少ない彼女が、「いい薬草がありますよ」と声をかけていた。
そして、次の日に、その薬草を飲みやすくして、その夫人に渡した。
数日して、その夫人が彼女のところにやってきて
とてもよく聞いたと喜んで話した。
それが、噂になり、他の人が薬を分けて欲しいとやってくるようになった。
そうして、彼女は、いろんな薬を薬草から作るようになっていった。
ある時、薬を渡すときに
彼女は、ふっと薬を取りに来た人の薬を受けとった手を
両手で包むように握っていた。
その途端、その人は泣き出した。
夫の看病の疲れと生活への不安そんな毎日の想いが噴き出してしまったらしい。
そんな話を彼女は、静かに聞いていた。
そして、話し終わると、
その人は「聞いてくれて、ありがとう」と言って帰っていた。
それから、彼女は、薬を取りに来る人たちの話を聞くようになった。
時には、その人たちの疲れた体をさすりながら話を聞いた。
彼女は、口数の少ない女性で
それが、以前結婚していた夫には気に入らなく、
夫の苛立ちになった、そして、時には殴られた。
そして、ついに家を追い出されてここに住むようになった。
そんな、悲しい思い出を持つ彼女は
ここに来る人たちの悲しみやつらさが
少しでも楽になればと思い、毎日薬を作り続けていた。
そうしていることで、自分の悲しみも軽くなっていくような気がしていた。