事件は起こらず・叡王戦第4局(2024.5.31) | 東京の四季(庭園&公園)のブログ

東京の四季(庭園&公園)のブログ

皇居東御苑・新宿御苑・都立庭園その他東京近郊の庭園・公園を眺め歩きます。また藤井聡太七段を中心に将棋界の動向も

◆事件は起こらず・叡王戦第4局

 

(1)第9期叡王戦五番勝負第4局

①●伊藤匠七段(先・2勝2敗)vs〇藤井聡太叡王(八冠・2勝2敗)

 ※第2局で伊藤匠七段が対藤井聡太竜王・名人・八冠戦の連敗を11で止めたのに続いて第3局でも鮮やかな逆転勝ちで連勝。シリーズ2勝1敗としてタイトル戦無敗の藤井叡王を初のカド番に追い込んでの第4局。勝てない相手に1勝したことで力関係が一気に逆転する例は藤井vs豊島将之九段戦で見られた通りですが、この再現になるとはチョット考えにくいように感じますが、叡王戦に限って観れば伊藤匠七段が勝って八冠の一角を突き崩す可能性は五分五分と観ましょうか。伊藤匠七段としては千載一隅のこのチャンスを逃がすと「藤井一強」に戻ってしまい次のチャンスを待たなければならなくなるので此処は石に噛り付いてでも叡王を奪取しておかなければならぬところ。藤井君からタイトルを奪取して立派に太刀打ちできるまでに成長したということを天下に知らしめる必要がありましょう。悲願の初タイトル獲得というプレッシャーとタイトル戦で初の敗北を喫するピンチに立たされたプレッシャーとの闘いは壮絶なものになることは必定。時代の流れを変えるとまでは行かないまでも一強体勢が崩れてタイトル移動が起きるきっかけとなるかならぬか?事件が起きるか起きないかという闘いとでも言いましょうか?

 ※藤井聡太vs伊藤匠の勝負の妙味は伊藤匠七段が羽生善治に対抗した森内俊之的な存在になれるかどうか?この一点になると思います。史上初の七冠全冠制覇を成し遂げた羽生善治九段の例を見ると、最大のライバルは森内俊之九段で通算の対戦成績は羽生81勝、森内60勝、羽生九段の勝率は.567。ライバルと目された同世代の他の強豪たちとの対戦成績はほぼ2勝1敗の確率で大差と言えるレベルですが、それでも度々タイトルを奪われているので番勝負の勝敗の確率も一戦一戦の積み重ねと同じような結果に近くなるということになりましょうか。森内俊之九段が先行する羽生善治九段を捉えたのは2000年11月頃で2013年7月頃までの12年半がタイトルを取ったり取られたりの拮抗・鼎立地代になると思います。この間の対戦成績は森内45勝、羽生43勝で森内九段が勝ち越していました。この間のタイトル戦では森内九段が8勝5敗(通算では羽生九段が9勝8敗)で大分勝ち越しています。通算成績は羽生九段が80勝61敗、勝率.567ですから森内九段が追い上げて一時は互角かそれ以上に戦ったものの先に衰えが来て再び突き放されたという感じ。タイトル戦では森内九段が明らかに優位に立っていた期間が有ったということで将棋史上に燦然と輝く一時代を両者で築いたと言えましょう。

 ※さて、藤井聡太vs伊藤匠の力関係は藤井聡太100%から84.6%に下がり、レート差からの勝敗確立は74%まで下がって早晩2勝1敗のレベルに落ち着くのではないかと予想しているところですが、藤井聡太君が何年も八冠を独占し続けて空前絶後の大記録を樹立するという期待が有る半面で、常勝状態が長く続き過ぎるのも味気ないというか面白みに欠けることにもなりましょうから伊藤匠七段には上手く戦えば藤井聡太君からタイトルを奪取出来るという先鞭を付けて欲しいと思う気持ちもありますし、藤本渚五段にも早くタイトル挑戦の場に立って欲しいし、また、永瀬拓矢九段にも巻き返しを期待したい。更には羽生善治九段、渡辺明九段、豊島将之九段その他の強豪にももうひと花咲かせて欲しいという期待もあります。いずれにしても藤井聡太八冠がタイトルを奪われて取り返すという展開にならないと盛り上がりに欠けることになりますし、対局が回って来ない開催地が生ずることになるので将棋人気の持続と地方経済の活性化のためにも挑戦者には一つでも多く勝ち星を挙げるように頑張って欲しいと願うものです。

 ※藤井聡太八冠とて人の子ですから未来永劫勝ち続ける訳には行きません。タイトル戦で初の敗北は今日かもしれず、6月20日(第5局)かもしれません。カド番を凌いでタイトル戦23連勝を達成するかもしれませんが、いずれにしても誰が最初に藤井八冠からタイトルを奪取するかは大きな楽しみ。その先は藤井聡太君が何回八冠に復帰するか?ということが大きな楽しみになりましょう。そしてどれだけタイトル獲得数を積み上げるか?これをどこまで見届けられるか?75歳になった私が将棋を楽しめる頭脳を維持した上で出来るだけ長く生き続けたいと願うようになった理由はここにあるのであります。

 ※伊藤匠七段、生涯初の大勝負の第一幕は両者研究が行き届いている「角換わり」のガチンコ真向勝負になりましたが勝負所を見出せぬままズルズル押された感じで「打倒藤井・初タイトル獲得」のプレッシャーに圧し潰された感じ。タイトル戦23戦目と3戦目の経験値の差が出たようにも感じました。藤井聡太叡王は初のカド番でも冷静沈着に勝ちを手繰り寄せた感じ。大勝負の第二幕は6月20日。藤井叡王は叡王を奪取した2021年度の第6期以来2度目のフルセット、伊藤匠七段は初ずくめで伸び伸びと指せるかどうかが?事件が起きるか?「藤井聡太一強体制」に戻るか?の分かれ道にまりそうです。第5局の対局場は山梨県甲府市湯村温泉の「常盤ホテル」で、将棋・囲碁のタイトル戦の定宿で過去に数多の名勝負の舞台になって来ましたがシリーズ終盤組まれることが多く藤井聡太八冠のタイトル戦は「やっと順番が回って来た」という思いでありましょう。これも伊藤匠七段の健闘の賜物。勝敗は別として充実した名勝負を期待したいと思います。