高校の時の友人が、電車の中、僕の前の席にいた。あれからもう40年近くになるが、彼は僕に気付いて目に涙を溜めていた。
1988年10月19日川崎球場。ロッテvs.近鉄 いわいる10.19である。近鉄は優勝がかかっていた。第一戦。第二戦。のダブルヘッダー。時間がなかった。そんな中で、ロッテ監督は猛抗議をして、近鉄の逆転優勝の時間を奪ったのである。
何が正解かは僕はわからない。そこまでプロ野球に心酔はしていなかった。ただその時、友人は川崎球場の切符売りだった。当日は大変な思いだったらしい。次の日、高校で彼は物凄く機嫌が悪かった。
アルバイト禁止の高校にあって、先生は、彼を一目置いていた。彼に注意をしなかった。むしろ、彼を労（いたわ）った。
僕も彼にいろんなことを教えてもらった。球技大会でスポーツ万能の彼は、バレーボールで、敢えてエースではなくセッターをやった。僕は裏エースである。精神的にも僕より数段年上の彼に、スポーツだけでなく人生について教えてもらった。
本当は彼は高校生の時に野球をしたかったんだ。
