「Where I'm Meant To Be」 ezra collective
サン・ラーの「Space is Space」のカバーによって、俄に注目されるようになったエズラ・コレクティヴ。サウスロンドンを語る上で決して無視することのできないジャズバンドのひとつで、メンバーはサウスロンドンにあるミュージシャンの養成機関トゥモローズ・ウォリアーズの出身者で構成される。フェミ・コレオソ(ドラム)とTJコレオソ(ベース)の兄弟を中心に結成され、鍵盤奏者のジョー・アーモン・ジョーンズを始め、トランペッターやサキソフォン奏者がプロジェクトごとに参加するのだが、今のところジョー・アーモン・ジョーンズは固定メンバーとして前作にも本作にもメンバーとして名を連ねている。筆者は大のジョー・アモン・ジョーンズファンなので、彼の参加は喜ばしい限りだ。移民が多く、人種のるつぼであるサウスロンドン出身のミュージシャンは、アフロやカリビアンなど、ルーツへのこだわりが強く、聴く人によっては「またか」と辟易するかも知れない。コレオソ兄弟もナイジェリア系イギリス人であり、ご多分に漏れず、アフロビート的なアプローチが多い。しかし、サウスロンドンのジャズシーンは、ユニットごとにルーツへの眼差しや解釈が異なり、そこが聴き所になっていることだけは強調しておきたい。
先のサン・ラーもそうだが、カバー曲を聴く限り、自らのルーツとは微妙に距離感のある曲を選んでおりルーツ一辺倒のバンドでないことが分かる。今回は、映画「モダンタイムス」で有名なチャップリン作曲の「Smile」だ。ジャズスタンダードとしても愛されている人気曲だが、オーケストラのイメージが強く、意表を突いた選曲だと思った。余談になるが、この曲は、ナット・キング・コールやマイケル・ジャクソンもカバーしている。この「Smile」の出来がよく、ピアノによる控えめなテーマが新鮮な導入部から、天空に溶けて行くようなジョー・アモン・ジョーンズのフェンダーローズを配した終盤まで全く退屈させない。室内楽風なジャズの流行も意識しているのだろうか。
アルバムは、アフロビートのモダンバージョン①「Life Goes On」で幕を開け、アップテンポなラテンビートが軽快な②「Victory DANCE」、ラップとホーンが絡み合うブロークンビーツ③「No Confusion」へと続く。⑤「Togetherness」、⑥「Ego Kiler」はレゲエ/ダブでUKらしい。
女性ヴォーカルをフィーチャーした⑨「Siesta 」はダ・ラータのようなラテントライバル。⑪「Belnging」はアンニュイなサックスとピアノに耳を澄ましたい。⑫「Never the Same Again」は途中から高速ラテンに変わる。ラストのヴォーカル曲⑭「Love In Outer Space 」は、ブラックジャズあたりの雰囲気もあるが、リリカルな味わいもあって面白い。
スピリチュアルなルーツジャズは小難しい。そう思っている音楽ファンにこそ、本作をレコメンドしたい。楽器を演奏すること/音楽を聴くことの楽しさがきっとここには
あるはずだから。
