「Live At Joshuazz Tree」The Yussef Dayes Experience
2020年にユセフ・デイズ・トリオ名義でリリースされた『Welcome To The Hills』がとんでもなく素晴らしかったドラマー、ユセフ・デイズによるエクスペリエンス名義のライブ盤が発表された。コロナ禍を経て、南ロンドンのジャズシーンが勢いを失っているように見えていただけに嬉しいニュースだった。ライブ盤ではあるが、『Welcome To The hills』もライブ盤だったからむしろ望むところだ。ヨシュア・ツリーと言えばU2のアルバムが有名だが、PVを見ると屋外で演奏している。ヨシュア・ツリーとはアメリカ南西部の砂漠地帯に生えるユッカの樹のこと。アルバムには客の声や拍手も入ってないし、そもそもそんな名前のライブハウスなど存在しないのかも知れない。
まず、1曲目の「Raisins Under The Sun(Desert Version)」は、コズミックで繊細な電子音が印象に残るナンバー。ユセフのブレイクビーツにサックスが絡む展開はオーソドックスだが、味わい深い。②「Odyssey」は前作にも収録されていたナンバーだが、エッジを抑えたダウンテンポな楽曲へとアレンジされている。続く③「Golden Hour」、④「Mystics」も、どこか感傷的でアブストラクトな作品だ。似ているわけではないのだが、DJカムのアブストラクトヒップホップを思い出した。③にはユセフ・デイズ・トリオのロッコ・パラディーノがベーシストとして参加している。⑤「Rhythm Of Xango」はアフリカを意識した」ドラムソロ。ユセフ・デイズ版『限りなきドラム』(マックス・ローチ)かと思いきや1分58秒で終わってしまった。次はどんな曲かと待っていても、いっこうに次の曲にならない。
じつは本作は収録曲6曲、収録時間17分のミニアルバムだったのだ。最長の曲で4分21秒。これは詐欺ではないのか。コロナ禍で満足なレコーディングも、ライブ活動も出来なかったからと言って、ミニアルバムをフルアルバムのように見せるのは反則ではないだろうか。
それでもユセフ・デイズほどのドラマーは貴重だから、許してあげよう。
思うにロバート・グラスパーやクリス・デイヴ、マーク・ジュリアナ、マカヤ・クレイブンなどのUS新世代ジャズドラマーは、Jディラを始めとするヒップホップの影響を受けてはいるがクラブ・ミュージック全般に通じているわけではない。その点、ユセフ・デイズ、リチャード・スペイヴン、モーゼス・ボイド等、UKジャズドラマーはブロークンビーツやベースミュージックなどの洗礼を浴びている。どちらが優れているというわけでもないが、筆者がUKジャズドラマーの方を求めてやまないのは、テクニックはさておき、UKでしか生まれ得ないセンスがあると信じているからだ。
