「トルマリン」26時のマスカレイド
世界に先んじているのか、ガラパゴス化に向かって邁進しているのかは定かではないが、日本のポップスシーンはボカロPの全盛期だ。YOASOBIのAyaseを筆頭に、Adoの作曲によりブレイクしたSyudou、「春を告げる」のくじら、「シャルル」の須田景凪等がチャートを賑わせている。Jポップを代表するヒットメーカー、米津玄師もボカロPだったことを忘れてはならない。こうした現象に拍車をかけるきっかけとなったのがコロナ禍におけるステイホームだと思う。アリーナやフェスではなく、YouTubeやティックトックを主戦場とするボカロPはコロナの影響を受けにくい。その一方で、Official髭男dismやMISIA、キング・ヌー、優里、藤井風など実力派の台頭も目立ったが、これはカラオケと切り離されたところで純粋に楽曲を享受する傾向が進んだことの現れと思われる。脱カラオケもコロナ禍の特徴と言えるだろう。コンサート、ツアー、劇場公演、握手会、ファンミーティング、カラオケが中止、自粛になる中、苦戦を強いられたのがアイドル業界だ。とりわけソーシャルディスタンスなきコミュニケーションを売り物にしてきた地下アイドルの多くは淘汰されても仕方ない状況だ。
ここで取り上げる26時のマスカレイド(3時のヒロインではない)のセカンドアルバム『トルマリン』は、そんな中配信された。彼女たちはアリーナクラスのアイドルではないが、地下アイドルではないし、それほど無名でもない。1曲目「トルマリン」は
疾走感のあるメロディーが心地いいナンバーだが、それ以外はいまひとつ決め手に欠ける内容だ。それでもボカロPばかりだと食傷気味で、たまには職人が腕によりをかけて作った一品が食べたくなるので、オーソドックスともいえる、このようなアルバムは貴重だ。彼女たちの最高傑作はミニアルバム『二人だけの初めてをもっと』(2020年)だと思うが、表題作や「君は青のままで」で聴けるサビのドライヴ感はBiSHの「オーケストラ」のような高揚感へと駆り立ててくれる。
