ブラック・ミディ 〜UKロックの現在 | Future Cafe

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「Cavalcade」Black midi

 

 

 UKロックを聴かなくなったのはいつからだろう。コンプリートしたくなるバンドはレディオヘッドが最後だったような気がする。レディオヘッドにしたところで、プライマルスクリームなどに比べれば生真面目な優等生ぶりが鼻についてそれほどのめり込んで聴いていたわけではなく、筆者の内なるUKロックへの熱は、マンチェスターを舞台にしたセカンド・サマー・オブ・ラブの狂騒とともに、ハウス・ミュージックという新たなジャンルに飲み込まれていったのだった。あれから30年余、とっくに賞味期限切れだと思っていたUKロックがとんでもないことになっているようだ。ブラック・ミディという地味な名前のバンドのラフ・トレードからリリースされたセカンドアルバム『カヴァルケード』を聴いて、UKロックが賞味期限切れなどと高をくくっていた自分の無知さ加減を大いに恥じることとなったのである。

 イタリアのプログレバンド、ゴブリンが手がけた映画「ゾンビ」のメインテーマのようなドラムではじまる①「John L」は、そのソリッドなドラムと弦楽器のユニゾンが呼応し合う形でテンションを高めながら、組曲風に展開していく様が圧巻だ。かと思えば、女優の名を冠した②「Marlene Dietrich」では、一転してバート・バカラックも真っ青な哀愁のボーカルナンバーを聴かせる。ポストロック的な要素を孕みながらも、オルタナティブを軸にクラシックへも食指を延ばした③「Chondromalaci Patellama」や、サックスを媒介にジャズへの越境も試みる④「Slow」は、このバンドの音楽性の豊かさを物語る楽曲だ。サウスロンドンを拠点に盛り上がるUKジャズとの共通点も伺える。「Slow」は、ポエトリーリーディングを加えればゲスの極み乙女。にもなりそうなキャッチーなナンバーでもある。その他にも、中盤から曲調が変わり、轟音ギターが炸裂する⑥「Dethroned」やデキシーランドジャズとイギー・ポップとアヴァンポップがカオスの森で出会ったような⑦「Fagwash and Baldedash」など、どこを切っても違う顔が出てくる金太郎飴のようなアルバムだ。

 「John L」のドラミングなどからキング・クリムゾンなどのプログレを引き合いに出して語りたくなるアルバムだが、用心しなければならないのは、彼らの意図がかつてのプログレとはまったく異なる次元にあるかも知れないと言うことだ。プログレが生み出す大きな物語に対して、ブラック・ミディの作り出す世界ははもっと脈絡を欠いて断片的である。インターネット世代がユーチューブやSNSからランダムに得た情報をシャッフルして発信するように、面白いと思える楽器やサウンドをミックスして楽しんでいるうちに、プログレに似たものがたまたま出来上がってしまったと考えるのは、穿ちすぎだろうか。(実際にはインターネット/SNS世代の方が陰謀論などの大きな物語にとびつきやすいという意見もあるだろうが、ここではその話にはあえて触れないでおこう)『カヴァルケード』というアルバムは聴くたびに新たな発見がある。とにかく興味深いバンドである。またぞろUKロックから目が離せなくなってきた。