「BLACK NOISE 2084」DJ Khalab
サンズ・オブ・ケメットのリーダーであり、UKジャズシーンの最重要ミュージシャンである、シャバカ・ハッチングスがゲストとして参加するアルバムが、またしてもリリースされた。とはいってもシャバカのサックスが聴けるのは、わずか②「Dense」の1曲のみ。全編を通じて異形のアフロファンクとも言うべき個性的なサウンドが跋扈する中、シャバカのサックスはアルバム全体の空気を支配するかのように圧倒的な存在感を見せている。
現在のロンドンでは、サンズ・オブ・ケメットを筆頭に、ザ・コメット・イズ・カミング、メルト・ユアセルフ・ダウン、エズラ・コレクティヴなど、アフロジャズやアフロファンク、アフロビートからインスパイアされたバンドやグループが一つの潮流を作り出しており、その多くにシャバカ・ハッチングスが関係して大きな成功を収めているのだが、DJカラブの「BLACK NOISE 2084」はそうした動きと連動しながらもシャバカとは異なるDJならではの方法論で制作されたアフロフューチャリズムの真打ちと言えるだろう。性急な高速ビーツを軸に民族楽器やサンプリングヴォイスが暴力的に渦巻くそのスタイルは、クロスオーバーやフュージョンといった言葉には容易に回収されない破壊力に満ちている。その相貌は、どこかパンクやアシッドハウス、ジューク/フットワークなど、初期衝動に基づく音楽にも似ている。実際は複雑なサウンドなのだが、アフロ、ジャズ、テクノの融合を安易に図ろうとするのではなく、衝突から生まれる緊張感を前景化させることで、パンクにも似た荒々しい表情を与えているのだ。もっとも「Black Noise」と題されているのだから、楽曲としてきれいにまとめる必要もないのだが・・・。しかし、このアルバムは多様なビートや楽器を異種格闘技のようにぶつけ合う一方で、それを安易にカオスなどと口にした途端、たちどころに見えなくなってしまうような繊細な美意識にも貫かれている。
このサウンド、中毒性が高いし、なによりハマれる。エレクトロの進化を受けて初めて可能になったトライバルミュージックといえるだろう。また、クラブミュージックを知るジャズドラマーの一人であるモーゼス・ボイドの参加(⑩「Dawn」)も嬉しい。数年前にトロピカル・ベースで話題になったクラップ!クラップ!もゲストに名を連ねている(⑩「Cannavaro」)。シャバカ・ハッチングス絡みでは、いくつかのグループのメンバーから成る混成バンド、メルト・ユアセルフ・ダウンの作品を聴いたときも似たような感触を感じた。DJカラブの方がメルト・ユアセルフ・ダウンよりも未来感が強いが、衝突から生まれる緊張感を前景化させるという点では共通するところも多いと思う。
