AKB48 他〜日本のEDM考 2 | Future Cafe

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「僕たちは戦わない」 AKB48



 一部ではオワコンといわれているAKB48だが、安倍総理の安全保障関連法案が閣議決定されるという絶妙なタイミングに、あえて「僕たちは戦わない」というタイトルの曲をぶつけてくるとは見事という他ない。その戦略のしたたかさは、オワコンどころか、逆に鋭さを増してきているような印象すら受ける。そして、注目すべきは、この「僕たちは戦わない」が、AKB48初となる本格的なEDMシングルであるということ。いまから思えば、「UZA」(2012年)もEDMを取り入れた作品であったが、ユーロビートやトランスからいまひとつ脱し切れていない中途半端なトラックだった。翌2013年に発売されたNMB48の「カモネギックス」の方がオリエンタルな粉飾が施されてはいるもののEDM度数は高い。



 「僕たちは戦わない」は、2011年にリリースされた「風は吹いている」の路線を踏襲するアコースティックなテイストのナンバーだ。だからといって、「UZA」のように中途半端なEDMトラックというわけではない。ニッキー・ロメロが参加したSEKAI NO OWARIのドラゲナイがそうだったように、ロックやポップスにシンセストリングスを加えてエレクトロ風にアレンジする手法は、EDMの王道のである。逆に、ロックミュージックとの親和性の高さこそがEDM最大の特徴といっても過言ではないだろう。そこが、EDMがハウスやテクノと決定的に袂を分かつところである。極論すれば、EDMはダンスミュージックより、むしろロックに近いノリとテイストを持つ音楽なのだ。そんなEDMの特質を最深部でつかまえているという点において、「僕たちは戦わない」は、じつに洗練されたEDMトラックといえるのだ。
 さて、日本におけるEDM現象だが、今年に入ってからますます勢いを増している。乃木坂46の「命は美しい」以降、4月には少女時代が「Catch Me If You Can」を、5月にはエグザイルファミリーの一員であるGENERATIONSが「EVERGREEN」を、さらにKARAがEDMアレンジを取り入れた「サマー☆ジック」をリリースしている。
 少女時代の「Catch Me If You Can」はハードなEDMサウンドが注目されたが、大きなヒットには至らなかった。韓流が下火であるということもあるのだろうが、KARAの「サマー☆ジック」の方はそこそこ健闘しているのだから、やはりハードなEDMよりもソフトでメロディアスなEDMの方が日本人には受け入れられやすいのだと思う。







 AKB48「僕たちは戦わない」に話を戻すと、PVは映画「るろうに剣心」シリーズでメガホンをとっている大友啓史監督が手がけているのだが、面白いのはエグザイルの楽曲である「ALL NIGHT LONG」のPVに雰囲気が似ていることだ。共にファンタジックな戦闘シーンを描きながらも、「ALL NIGHT LONG」はエグザイルメンバーのヒーロー性がひたすら誇張され、「僕たちは戦わない」のPVではAKB48のメンバーが次々と闘いに敗れていく。もちろん、「僕たちは戦わない」と宣言しているのだから、戦いにおいて戦闘に勝利することはありえない。負けることで勝つ、或いは母性愛において勝利する姿を描く結末になるであろうことは誰でも容易に予測がつくことだろう。



 斎藤環風にいえば、エグザイルはヤンキー的精神性を持った人々(マイルドヤンキー)から絶大な支持を獲得しているミュージシャンであり、エグザイルの人気を近年の全体主義的風潮に結びつけて語ることも不可能ではないだろう。だが、ことほど左様に簡単な話ではない。
 2009年、天皇陛下御即位20年の式典において奉祝曲『組曲 太陽の国 第3楽章「太陽の花」』がエグザイルによって歌われたが、その作詞を手がけたのが秋元康なのである。天皇主義=右翼とは限らないから、「僕たちは戦わない」の作詞者が奉祝曲の作者と同一であってもかまいはしない。恐らく秋元康の頭の中には、男性グループのエグザイルがナショナリズムの象徴なら、女性グループのAKB48はリベラルの象徴で行こうというマーケティング判断があっただけだ。イデオロギーさえもマーケティングのツールとして利用する。そのひとつが、「僕たちは戦わない」のPVなのだろう。
 日本のEDMは、今年に入ってから目立つようになってきているのだが、過去に遡って調べてみると嵐「Face Down」(2012年)、NEWS「World Quest」(2012年)、関ジャニ∞「sorry sorry love」(2013年)など、ジャニーズ系のグループの楽曲には比較的早くから取り入れられていることが判明。さらに、ナオト・インティライミが2013年にリリースされたアルバム「Nice catch the moment!」を久しぶりに聴き返してみて、「Brand New Day」という驚愕のEDMトラック(笑)が収録されていたことを思い出し、じつは現象として見えていなかっただけで、完成度はともかく、今日までにじつにさまざまな日本人アーティストがEDMに取り組んでいたことに気づかされた。