DARKSTAR〜UKポップの鉱脈 | Future Cafe

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NEWS FROM NOWHERE/DARKSTAR

 デイヴィッド・ボウイの10年ぶりの新作アルバム「THE NEXT DAY」のジャケットが、なんとも凄いことになっている。1977年の名作「ヒーローズ」のジャケット写真の顔の部分が正方形でくりぬかれ、そこにタイトルが入るという、あり得ないデザインが採用されているのだ。「ヒーローズ」は、ニューウェイヴの先駆けとなった「ロウ」、「ロジャー」と並ぶベルリン3部作のひとつで、当時、舞踏家のリンゼイ・ケンプに師事していたデヴィッド・ボウイが演じるパントマイムを鋤田正義が撮影したジャケットで知られている。
 何故そのようなことを引き合いに出したかと言えば、顔を隠すというアートワークが、ダブステッパーであるスクリームの2nd「OUTSIDE THE BOX」に似ていたからだ。ダークスターの新作「NEWS FROM NOWHERE」を聴いていて、初期ニューウェイヴを連想させる瞬間は少なくなかった。ダークスターといえばポスト・ダブステップのバンドとして注目されているユニットであり、連想ゲームのようではあるが、デイヴィッド・ボウイ~スクリーム~ダークスターが、「ニューウェイヴ」~「ダブステップ」~「ポスト・ダブステップ」といったキーワードでつながるのは決して偶然ではないだろう。
 もっとも初期シングルの「Dead 2 Me/Break」がポストダブステップという言葉が持つ印象をほぼ正確になぞっていたのに比べ、ハイパーダブレーベルからリリースされた1st「NORTH」では、そのダークネスにかろうじてポストダブステップの残滓は感じられはするものの、ハイパーダブからリリースされていることからくる先入観を取り払えば、シンセポップ或いはエレクトロポップとしか形容できない世界観を提示していた。
 はたして、ハイパーダブからワープへとレーベルを移籍してリリースされた本作「NEWS FROM NOWHERE」では、さらなる脱ポストダブステップ化が図られていて興味深かった。NORTH(北)から、NOWHERE(どことも知れない場所)へ。無機的な工場の風景から、カラフルなフラワーアレンジメントへ。タイトルやアートワークのイメージそのままに、ファーストアルバム「NORTH」の無機的なシンセポップの世界から、カラフルでドリーミーなポップスへと変貌を遂げたといっても過言ではないだろう。
 クラフトワークなどのエレクトロポップの影響が強いが、中には「A Day's Pay For A Day's Work」のようにビーチボーイズを意識したと思われるメロディアスなトラックもあり、ウォッシュド・アウトやビーチ・ハウスなどのチルウェーブの多幸感に近づいてきているのは明らかだろう。チルウェーブ自体がニューウェイヴの影響下にあることを考えると、デイヴィッド・ボウイ~スクリーム~ダークスターの連想ゲームが俄に必然性を帯びてくるのである。THE・XXもそうだが、ポストダブステップ組からは、ヤングマーブルジャイアンツが在籍したラフトレード、ニューオーダーやドゥルッティコラムが在籍したファクトリー、コクトーツインズが在籍した4AD、さらにはマイブラディバレンタインが在籍したクリエーションレーベルなどに代表されるニューウェイブ~UKインディーズロックとの関連性が見受けられる。その流れをさらに遡行していった先には、ブライアンイーノとのコラボレート期のデヴィッド・ボウイやロバート・ワイアット、ケヴィン・エアーズなど、プレニューウェイヴの華麗なる鉱脈がある。
 デイヴィッド・ボウイの10年ぶりのアルバムとダークスターの2ndアルバム。同年代に放たれる2枚のアルバムが予兆しているのは、エレクトロクラッシュとは異なるかたちでのニューウェイヴの復権という物語かも知れない。



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