FUTURE SOUNDS OF JAZZ.12〜コンポストからの逆襲 | Future Cafe

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FUTURE SOUNDS OF JAZZ/V.A.

コンポストレーベルの名物コンピレーションアルバム、「FUTURE SOUNDS OF JAZZ」の12作目がじつに5年ぶりにリリースされた。まったく予期しない青天の霹靂のような出来事で、驚かされた人も多いだろう。
シリーズ1作目が発表されたのが、1995年のことだからいまから17年ほど前になる。
シリーズ1作目には、ジミー・テナーやザ・マイティ・ポップ、カルマ、ワゴン・クライスト等が手がけたダウンテンポが13曲収められており、フューチャージャズの流れをつくったといっても過言ではない。シリーズ2作目になると、ジェントル・ピープルのようなラウンジから、テクノのμ-zig、ポストロックのトータス、トリップホップのセイバーズ・オブ・パラダイスまで、当時の流行を片っ端から集めたような内容で、やや強引な感もなきにしもあらずであったが、カテゴライズ不能の一連のアブストラクト・ミュージックをひとまとめにしてフューチャージャズという概念を提示して見せたという点で、その後のクラブジャズシーンの形成に同シリーズの果たした役割の大きさは計り知れない。
その後も、ドラムンベースやジャザノヴァなどのエレクトロボッサなどをいち早く取りあげるなど、同シリーズはシーンの牽引役を果たしてきた。6作目ではアレックス・アティアスのビートレスやフィル・アッシャーとネイザン・ヘインズによるレストレスソウル、ドミニク・ジェイコブソンとカイディ・テイタムのモダージなどウエストロンドン勢によるブロークン・ビーツを紹介。8作目ではHIRDやアンドレアス・サーグのソロプロジェクトであるステイトレスなど、北欧におけるNUジャズを採りあげるなど、シリーズ初期の勢いはなくなったもののシーンにしっかりと寄り添っていた。
しかし、2005年頃のファイブコーナーズクインテットの登場以来、シーンを取り巻く状況は一変することになる。リアルジャズに近いハードバップが主流の座を占めるにつれ、イタリアのスケーマ・レーベルやフィンランドのリッキー・チックなどに覇権が移っていき、コンポストやジャザノヴァの主宰するソナーコレクティヴ、ニンジャ・チューンといったクラブジャズを牽引してきたレーベルが、次第に影を薄めていくことになるのだ。もっとも、ファイブコーナーズクインテット登場の下地を用意したのは、スウェーデンのKOOPが2001年にコンポストから発表した「ワルツ・フォー・クープ」であり、自らの命にとどめを刺すことになったと言っても過言ではないだろう。
2005年に発表されたシリーズ10作目は、「FUTURE SOUNDS OF JAZZ」とは名ばかりで、ファイブコーナーズクインテットの活躍に背を向けたテックハウスのようなトラックばかりが目に付く、内容でクラブジャズファンの失望を買った(と思われる)。しかし、今聞き返してみるとリカルド・ヴィラロボスの「FOOLS GARDEN」がさりげなく入っていたりして、マイケル・レインボース(コンポストの主催者であり、シリーズの選曲者)の慧眼ぶりに驚かされるのだ。クラブジャズというカテゴリーを無視すれば、シリーズ10作目も、11作目も決して悪くない。むしろ変容したのは我々の耳の方で、マイケル・レインボースは最初から今日まで一貫して「FUTURE SOUNDS OF JAZZ」の概念を提示してきたということもできるのではないか。
つまり、マイケル・レインボースはこういいたかったのではないか。「ファイブコーナーズクインテットは、ニュージャズであっても、フューチャージャズではない」と。同シリーズに収録されたKOOPの作品も彼らの本流とは異なるミニマルなトラックだったし、POVOの作品もムーンスターによるリミックスが施されていたことが、何よりそのことを示唆している。
さて、シリーズ12作目となる本作だが、なんとシリーズ5作目以来となる2枚組での登場となった。ざっと聴いての印象だが、マイケル・レインボースは不遇の時期を経て、周回遅れで再びシーンの最前線に返り咲いたのではないかということだ(シーンなるモノがいまだに生きていると仮定しての話だが‥‥)。ここに収録されているアーティストは、正直、ワレイカやアンドレアス・サーグなどを除けばよく知らない人たちばかりだ。しかし、ジャズを感じる曲も多いし、どの曲も新鮮に聞こえてくる。
この作品を聴いてからシリーズ10作目も、11作目も聴き返してみたが、聞きどころは多く、やはり変わったのはコンポストやマイケル・レインボースではなく、音楽シーンであり、聴衆の側であったということに気づかされる。同じことを20年近くも続けていると浮き沈みもあるだろう。しかし、並外れた嗅覚を持っていれば、やがて再び日の目を見ることもある。そんなお手本のようなアルバムだ。前作から5年もかかったのは、生演奏クラブジャズのブームが衰退し、再びエレクトロニクスに光が当たる時期を待っていたのかも知れない。2枚組24曲というボリュームにマイケル・レインボースの初期衝動にも似た興奮が見て取れる。




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