BURIAL〜孤高のダブステッパー | Future Cafe

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STREET HALO/KINDRED/BURIAL

2011年の「STREET HALO」と2012年に発表される「KINDRED」、2枚のシングルから3曲づつをカップリングした日本限定企画盤。ダブステップシーンを印象づける衝撃的なデビューアルバム「BURIAL」が発表されたのが2006年だから、すでに6年近い月日が経とうとしている。
6年といえば、流行のサイクルが早まる中、新しい音楽ジャンルが浸透してからライフサイクルを終える期間にほぼ等しいといってもいいだろう。たとえばドラムンベースの場合だと2~3年ほどの潜伏期間を経て、ゴールディーの「TIMLESS」により市民権を獲得した後、5年以内に衰退しているし、ブロークンビーツもネオンフュージョンがブレイクしてから5年ぐらい、NUジャズもファイブコーナーズクインテットがデビューしてから5年ぐらいでムーブメントは終息している。ダブステップはアルバム単位のヒット作が少ないため、それだけの期間が経っているという実感は薄いが、やはり既に衰退期に入っていると見て間違いないだろう。それを裏付けるかのように、昨年辺りから「ポストダブステップ」というキーワードが頻出するようになってきている。
ブリアルの今後の動向を占う本作を一聴して思ったのは、ブリアルはデビュー時からポスト・ダブステップだったのではないかということだ。もちろん、ダブステップの黎明期からポスト・ダブステップだったなんてことは実際にはあり得ない。どういうことかといえば、ダブステップのシーンにブリアルの後継者はほとんどいないにも関わらず、現在のポストダブステップシーンに最も大きな影響を与えているのは紛れもなくブリアルであるということだ。
シーンの初期にあって人気を二分したのはブリアルとスクリームだが、両者のベクトルは同一ジャンルとは思えないほど異なる方向を向いていた。当時はそれがダブステップというジャンルの幅の広さのようにも見受けられたが、それも長くは続かなかった。シーンの黎明期において対照的な2つの勢力が凌ぎを削り合うというのは、クラブミュージックの世界ではよくある話だ。しかし、ジャンルが一般に浸透するにつれて、次第にハードステップ系に収斂されていくというケースは多い。ドラムンベースも、ブロークンビーツも、ポピュラーになるにつれ、繊細さを欠いた大味な作品ばかりが目立つようになっていった。ダブステップも例外でなく、主流となったのはハードステップ系のスクリームであり、ブリアルのように知的で洗練されたサウンドはそれほど多くの後継者を持ち得なかった。
にも関わらず、現在のポストダブステップシーンは、ブリアルの後継者ともいうべきクリエイターであふれかえっている。このブログでも過去に登場しているホー
リー・アザーやバラム・アカブといったウィッチハウスの面々やジェームズブレイクがそれだ。ライナーノーツで野田努氏は「ブリアルは新世代に触発されたかのよう」と述べているが、むしろ新世代こそがブリアルの影響下にあると捉えた方がしっくりくるのではないか。確かにバロック的な展開やトランシーなハウスビートは、新世代の影響を感じさせる部分もあるが、ブリアル自身の旧作である「BRIAL」や「UNTRUE」に耳を澄ませば、その中に後のウィッチハウスやジェームズブレイクにつながる萌芽を見出すことは難しくない。
唯一無二ともいえるサウンドに身を委ねていると、はたしてブリアルの音楽はダブステップなのかという疑問すら生じてくるのだが、安易なフォロワーを寄せ付けない孤高の音楽性は、ブリアルというひとつのジャンルを形成しているといっても過言ではない。ブリアルがつくり出すメランコリックでストイックなサウンドが、スクリームやRUSKO、PERVERELIST、マグネティックマンのそれと同じものとはとても思えないのだ。ZOMBYやコード9など比較的ブリアルに近いといわれているクリエイターのサウンドであってもそれは同様だ。
じつに魅力的で完成度の高い音楽を聴かせてくれるのクリエーターではあるが、ブリアルはスタイルを大きく変えながらジャンルを越境していくようなタイプのアーティストではない。ジャンルの奥底へと深く深く沈潜していくように、自らのサウンドを研ぎ澄ませていくタイプのアーティストであるが故、この先これ以上の展開を期待してもきっと肩すかしを食らうことになるだろう。それでもいいから、リアルタイムでブリアルを聴けることの歓びにもう少し浸っていようと思う。



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