本書が藤原書店から出ていることに驚きを感ずる。竹山道雄は「危険な思想家」の1人とされた人である。しかし今日の視点から見ると、実に一貫していたことが知れる。戦前は反軍部、反ナチズム、戦後は反東京裁判、反ソ、反毛沢東であった。
平川祐弘は竹山の娘婿である。本書は伝記だが、自伝とも言える。ふたりの立ち位置を象徴するのが東大教養学部教養学科だ。
では教養とは何か。平川によれば「習ったことはすべて忘れてもなお残るなにか」である。
本書で忘れ難いのは、歴史の正義不正義について、タイムスパンによって変わるのではないかとする記述だ。
「日の単位で測るなら、ハワイ奇襲攻撃で先に手を出した日本に非がある。月の単位で測るなら、ハル・ノートは明らかに不当な挑発である。だが年の単位で測るなら、南仏印進駐にいたる軍国日本の行動がすべて正しかったとはよもや言えまい。しかし世紀の単位で測るなら、西洋列強の世界植民地に対する日本の「反帝国主義的帝国主義」の戦争にはたして三分の理がなかったといえるものかどうか」
こういう柔軟な見方があっても良いだろう。
