新幹線路線のネットワークが全国に広がりつつある今、新潟県も鉄道のアクセス改善と高速化を検討している最中ですが、これまで出てきた案の中から私なりに良いなぁ〜と感じたものを3つにまとめました。


案1: 長岡〜上越妙高駅間フル規格化、羽越新幹線の部分的開業構想


これは、最初からそのまま素直に標準軌のフル規格新幹線を敷設するものです。新柏崎駅(仮称)が、途中停車駅として設けられる計画となっています。柏崎市にとっては長年の祈願となりますし、将来的に北陸のみならず、関西方面との鉄道アクセス向上に繋がる可能性がある計画です。


ただ、長大トンネルの掘削などにより、それなりの事業費がかかることが予想されますし、長岡〜直江津間の信越本線が並行在来線としてJR東日本から経営分離される可能性があります。日本海縦貫線の在来線貨物列車が多数運行されていますが、それらの線路使用料が大きな収入源だとしても、新潟県にとってそれなりの財政負担が必要になる可能性があります。


案2:  北越急行・ほくほく線をミニ新幹線化する構想


案1が実現するまでの当面の措置として、上越妙高駅から北越急行・ほくほく線のうらがわら駅付近に至るまでの区間をフル規格化し、その先は北越急行・ほくほく線と接続させる新たなアプローチ線を敷設する構想です。時速200km/h以上の高速走行が容易なことや、途中停車駅となる十日町駅は関西、北陸地方を結ぶ新幹線が通ることによる恩恵を受けることになります。また、北陸新幹線金沢延伸開業以来、赤字続きの北越急行の救済にもなりますし、貨物列車を長期間運休させずに済むことが挙げられます。


ただ、こちらも上越妙高〜ほくほく線のうらがわら駅付近に至る区間(約21km程)において、長大トンネルの掘削が必要になることや、ほくほく線を改軌工事したり、電化方式を直流1500Vから新幹線で使われる交流25kV(50Hz)に変更したりする工事が必要になりますので、それなりの事業費がかかることが予想されます。また、この場合、浦佐駅付近で上越新幹線と合流するため、やや遠回りになることや、新幹線を兼ねてより要望している柏崎市には新幹線が通らないため、十日町市との地域格差が逆転し、拡大する恐れがあります。新潟県内の鉄道アクセス向上というより、新潟県外(北陸、関西方面)の広域移動を円滑にするという方が、より意味合いが近いのかもしれません。


案3:  長岡駅の新幹線ホーム10番線に在来線特急しらゆき号を乗り入れさせ、対面で上越新幹線のとき号に乗り換えできるようにする構想


これは、前回、ご紹介しました通りの内容でして、上越新幹線が田中角栄の力によって1982年に開業して以来、40年以上もの間、永久に使われていない10番線ホームに在来線の特急しらゆき号を直接乗り入れさせるため、在来線用の狭軌レールを敷設し、信越本線の直江津・柏崎方面へ連絡接続するアプローチ線を新規に敷設するという構想です。


対面乗り換え方式は、最近、西九州新幹線の武雄温泉駅や同じく上越新幹線の新潟駅で採用された乗り換え方式で、乗り換えによる心理的負担を少しでも減らせる効果があるとされています。実際、体験するとお解り頂けるかと思いますが、意外にも乗り換えがスムーズで楽だった気がします。


在来線特急しらゆき号は長岡止まりの折り返し運転とし、上り方面からやってくる上越新幹線とき号は、東北新幹線の福島駅みたいに下り新潟方面の11番線ホームに入線させ、折り返し運転を行い、新潟〜長岡間のシャトル便(北陸新幹線敦賀延伸開業以前のつるぎ号みたいな形)として運行します。北陸新幹線が金沢に延伸開業して以来、上越新幹線の高崎より以北の区間の線路容量にはかなり余裕があるとの情報を得ていますから、ダイヤ設定次第では長岡〜新潟間の新幹線通勤者の需要をも拾える可能性があります。もし、そうなれば、JR東日本としてはより効率的な旅客輸送となり、収益アップに繋がる可能性があります。


信越本線はJR東日本のまま残りますし、貨物列車を長期間運休させずに済みます。長岡駅の新幹線ホーム10番線に在来線用の狭軌レールと直江津・柏崎方面の信越本線へ連絡接続するアプローチ線を新規に敷設するだけですので、案1と案2に比べれば、事業費のハードルを下げられるかもしれません。


新潟県内の移動を考えた場合には、これが一番有力で現実的な案かもしれませんが、関西・北陸方面の広域移動を考えた場合にはこれまでとあまり大差がないようにも感じます。特急しらゆきは、これまで通り、信越本線区間を走行するため、速度は現在と変わらないままとなります。


長岡駅では新幹線との乗り換えがスムーズになりますが、駅の設計の構造上、北陸新幹線の上越妙高駅での乗り換えは現在と変わらず、不便なままとなります。


また、新井駅始発から糸魚川駅始発に変えた場合でも同様です。


糸魚川始発に変えた場合、直江津に至るまでの間に交直切り替えのデッドセックション区間があるため、そこを現在のE653系が故障せずに通過できるかどうかといった問題もあります。


改めてE653系交直流型電車のスペックを確認した感じの印象では不可能ではなさそうですが、実際に営業用車両として運行する場合には安全面や耐久性などといった色々と細かいところをクリアする必要があるかもしれないので、正直、何とも言えない状況です。


以上が新潟〜上越妙高駅間の鉄道アクセス改善案として私なりにまとめましたが、皆さんはどうお感じになりましたか?


新潟県では今年度中にそれぞれの事業費と費用対効果、便益比を詳細にまとめて発表するとしていますが、それぞれの案にもメリットとデメリットがあるため、それぞれの利害が一致して、なるべく多くの皆さんが納得のいく形の案に最適化されることを願っています。