以前、故郷の友人友吉と再会した正八は、彼が非業の最期を遂げた時、その敵討ちを鉄達に託し、自らは貸本屋の中で苦悩していた。
その次のお話しでは、自らに仕置きの力がない事を恨んでか、鉄のマネをして仕置きの特訓をして、巳代松に笑われていたっけね。唯一の友の死を、その仇を、何も出来ない自分が相当悔しかったに違いない。
時は流れて、正八はおたみという女に恋をした。
最初は遊びだった。
が、天真爛漫。身ごもった子供を産みたいと思いつつ、正八が流産させる為にした無茶な要求にも笑顔で応えたけなげな女だった。その女の真心が、正八の心を捕らえてしまった。こうなるともう、男って生き物はその女の事しか考えられなくなってしまう。
その為に正八はミスをした。
そのミスが元でおたみは殺されてしまった。
おたみの為に仕置人を抜けると言った正八に「その女、ひねり殺してやる」と言ったのは鉄だった。
正八が出ていった後で「しょうがねぇなぁ。よし、叩っ殺してやる」と言い放ったのは主水だった。
鉄も少し前に女に惚れて骨抜きになりかかったけど、彼は仕置人を辞めようとは思わなかった。
主水も妻帯して裏稼業を続けている。
だから、女に惚れてふぬけになり、仕置人を辞めると言いだした正八を許せなかったのか?
鉄と正八は主水が合流する前からの古い仲間だった。
その鉄におたみを殺させる事を良しとしなかったのかな、主水さん・・・。
しかし、おたみは鉄にも主水にも殺されなかった。
正八がドジって殺されてしまった。
おたみの死を看取った正八の悲しみは、凄まじいものだった。
そして自らのドジで乙多見を死なせてしまったと知った正八に、他には任せられないだろうと合い口を握らせる鉄もまた凄まじい。
密偵役を続けていた正八が、友人の仇を討てなかった正八が、初めて合い口握って仕置きする。
「新必殺仕置人」のお話しの中で、実はこの話が一番好きなんです。
物語のみならず、仕置きのシーンも実に凝ったモノでした。
主水が姿をさらし、踏み込んできた的を鉄が頭上から襲う。そこへ主水の刀が一閃!
主水が囮になって、次の的を呼び込み、鉄の指が肋骨を抜き去る。
このコンビネーションがまた素敵。
巳代松も敢えて殺しはせず、正八のサポートに徹しているのもまた良い。
ラストシーン、子供の衣服や夫婦茶碗・・・使われるはずだったモノ・・・もう使われる事のないモノ・・・それらを海に捨てる正八の姿が胸にいたい。
私に中では、このお話が「新必殺仕置人」で一番なんです。