ことば選びは難しい。。。。
平昌冬季五輪 小平奈緒選手が女子500mスピードスケートで金メダル!
レース後、インタビューしたアナウンサーが
『獣のような滑りだったと思います』
と問いかけたことに関し、
「女性に対して失礼だ!」とか「意味がわからない!」
と彼を非難する声がSNSなどに上がりました。
もちろん、彼は小平選手を讃えようとことばを選んだつもりが
一部の視聴者には逆効果だったようです。
小平選手が以前、「ヒョウやチーターのように」という表現をご自身で
使われたことがあったという背景などを考慮して、彼を擁護する声も少なくありません。
私たちアナウンサーは、言葉で表現することを生業としています。
様々な場面や状況でどのようなことばを選べば良いか、常に気を使っています。
長年アナウンサーという職業に携わってきた私も今回のことで
“やはりことば選びは本当に難しい”とつくずく感じます。
例えばあの場面では、
ケダモノのような = XX
まるでチーターの様な = ◎
獣(けもの)の様な = X
躍動感あふれる = ○
獲物(えもの)を狙う様な = △
シャープな = △
という選択肢だったのではないでしょうか。。。
評価としては、
左側は、インタビューの対象者、この場合は小平選手が
気分を害する、もしくは視聴者が相応しくないと感じる場合があり得るということです。
右側は、少なくとも小平選手が気分を害することなく また
視聴者にとっても違和感のないことば選びではありますが
「躍動感あふれる」や「シャープな」は平凡にも思えます。
私が考える今回の正解に近いことば選びは『まるでチーターの様な』です。
かつてアテネ五輪の体操・鉄棒競技で
『伸身の新月面が描く放物線は、栄光への架け橋だ!』
と実況したアナウンサーは『伝説の』と評される様になりました。
もしかしたら、あの場面でかつて小平選手が口にされたことばをもとに
『まるでチーターの様な滑りだったと思います!』
という「ことば選び」を彼がしていたならば、小平選手の表情もさらに輝いて
『伝説の名インタビュー』と称賛されていたかもしれません。
「ことば選び」はとても難しい上に、瞬間的で、
しかも一旦、口から飛び出したことばは二度と上書きすることはできないのです。
インタビューした彼は、小平選手の表情やことばから「しまった!」と
瞬間的に思ったかもしれません。でも、残念ながら上書きすることはできないのです。
1/100秒にかけるアスリートたちと比べることはできませんが、
アナウンサーたちも一瞬の「ことば選び」に神経を使い、絶え間なく準備をしていることも
ご理解いただけるとありがたいなと思いました。。。。