今でこそ私は完全なインドア人間となってしまいましたが、幼少の頃は日が暮れるまで泥まみれになって友達と遊んだ記憶があります。鬼ごっこ、缶蹴りや基地づくりに没頭した当時の記憶が私の中で色褪せることはありません。昨年から縁があって、早稲田大学の前橋明教授や元オリンピック選手の為末大さん等が主宰する「子どもの健全な成長のための外あそびを推進する会」に顧問として関わることになりました。並行して、井上信治代議士はじめ有志の議員で勉強会を始めました。今回はその成果を外あそび推進に関する提言としてまとめて、加藤官房長官に提出しました。
 外あそびは子ども達の健全な成長に不可欠です。自主的に楽しく体を動かすことは身体能力の向上につながり、太陽光を浴びることは近視の予防、骨格と歯の健康や、メンタルヘルスの改善につながり、仲間と遊ぶことはコミュニケーション能力や社会性の向上につながります。良い点を挙げればキリがありません。他方で、子どもの外あそび時間は35年間で3割減少しています。特に昨年はコロナ禍の影響で前年と比べて4割も減少しています。こうした時間の不足だけでなく、学校、地域、家庭全ての場面で、空間と仲間(合わせて3つの間:いわゆるサンマ)も不足していると言われています。
 世界的にみても、デジタル社会や少子化社会の到来とともに子ども達の外あそびの時間は減っています。こうした中、イギリス、ドイツ、台湾やシンガポール等では政府や自治体が意識的に外あそびを推進しています。一方、わが国はスポーツ・運動や自然体験のはざまで外あそびを明確に意識した施策はほとんど存在しません。
 安全意識の高まりによって校庭・園庭や公園はますます利用し難くなっています。また、子ども達を安全に遊ばせるリーダーとなる大人達自身(例えば、保育士、幼稚園・学校教諭、児童クラブの職員等)も外あそびの経験が十分とは言えません。しかしながら、近年は、子ども達に外あそびの機会を提供するNPO法人や、外あそびの空間を確保しそのコンテンツを提供する企業など、民間主体の草の根の動きが広がっています。
 上記を踏まえて、今回の提言では、①外あそびの空間の整備、②外あそびを指導・サポートする人材の育成・確保、③子どもおよび子どもを取り巻く大人の意識改革の3つを柱に、国・自治体が民間主体を上手く巻き込みながら法律、施策、ガイドラインを策定すべきと要望しました。また、外あそびに関しては、現状でも内閣府、国交省、文科省、厚労省、環境省など所管省庁が多岐にわたることから、設置が検討されている「こども庁」の主要業務の一つとして政府横断で包括的・一元的に取り組むよう、加藤官房長官に提案し、前向きな発言を頂戴しました。