『安閑園の食卓』 | 荻原和歌オフィシャルブログ Powered by Ameba

『安閑園の食卓』

安閑園の食卓 』というたいへん優れた食エッセイがあります。

著者は辛 永清さんという台湾出身の料理研究家。

大変残念なことに故人ですが、不思議なきっかけで、

文章やレシピに触れることになり、

その品のよさ、おいしさから辛先生の大ファンになりました。



この本に書かれているのは、戦前1930年代の台湾。

食通のお父様と料理上手の母、裕福な家庭で育った著者の思い出話です。


お父様が「安閑園」と名付けた広大な自宅敷地で生産される

牛豚鶏や完全無農薬の野菜。

それらの材料を使い、愛情をこめて作られる料理の数々。

数多くの使用人を使う大家族の暮らし。

台湾の芸術的な精進料理について触れられた章もあります。

市場の楽しみ、宝石売りのおばあさん、淡い初恋の行く末など

ひとつひとつがキラキラしたエピソードで

体験したわけでもないのになんだか懐かしさを感じてしまうのです。


中でも忘れられなかったのが

成長期の息子や娘のおやつとして作られる鶏の丸焼きのお話。

一人に一羽あてがわれ、小さな兄弟は残った部分しか食べさせてもらえない特別な料理だそうなのです。

ショウガをたっぷり使って、大きな鍋でいぶしながら作る鶏って、どんな味なんだろう…

と口中によだればかりためておりました。



先ごろ、辛先生のご子息という方からツイッターを通して連絡をいただきました。

前にやっていたブログで、この本について触れた回を目にとめてくださったそうなのです。

そのご案内とは、『安閑園の食卓』の文庫化と

記念食事会の計画でした。

驚いたの驚かないのって、ITってすごいものですよね。


そして先週のこと…

この本を知るきっかけとなった方と一緒に食事会に行って参りました。

会場はWakiya一笑美茶樓。

辛先生のレシピからなる中華フルコース。

会場には辛先生の写真がもりだくさんの花とともに飾られ、

ゲストはほとんどが年上の方…というか、

岸朝子先生をはじめ、各界の重鎮がずらり。

おそらくあの場で私が最年少だったと思います。

時代を超えた不思議なひとときでした。

もちろん料理はたいへんにおいしかった。


そして、メニューの中には、あの、鶏肉のお料理の名前があったのでした。

感動!!!

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想像していたよりもずっと品のよい…滋味、美味でした。



最後にはご子息の辛正仁さんともご挨拶でき、

ご縁の不思議さをつくづく感じたのでした。



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食事の〆は台湾茶。

芳しさ、味、体との相性、すべてにおいてNO1かもしれない、大好きなお茶です。



安閑園の食卓 』、興味を持たれた方はぜひご一読くださいね。